埼玉県さいたま市でおととい20日(2012年2月)、60代の夫婦と30代の息子が遺体で見つかった。死後2か月ほどと見られ、一部はミイラ化していた。室内に食べ物はなく、現金も数円という状況から餓死したと見られる。
昨年暮れに妻が近所に「お金貸してください」
3人が死んでいた部屋は3階建てアパートの1階。夫婦は6畳間、息子は4畳半でそれぞれ布団に入った状態だった。家賃は半年前から滞納しており、公共料金も滞納で、電気・ガスは止められていた。水道だけは止まっておらず、枕元にペットボトルを置いて最後は水だけで過ごしていたと見られる。
父と息子は建築関係で働いていたらしいが、アパートの家主らによると、父親が体調を悪くして働けなかったという。昨年12月半ばに、妻と見られる女性が近くの家を「お金を貸して」と訪れていた。初対面だったので「民生委員に相談したら」と断ると、「いいです」と立ち去ったという。水道料金も滞納していたが、「夫が入院している」というので水道は止めず、「福祉課に連絡しなさい」とすすめたという。しかし、一家は何もしなかったらしい。30代の息子がいながらなぜなのか。
住民登録なく、生活保護申請もなし
こうした家族ぐるみの死亡例がこのところ相次ぐ。東京・台東区でも同じ20日、90歳の男性とその長女(63)がベッドで死んでいるのが見つかった。寝たきりの長女の面倒を父が看ていたが、その父が倒れ、1か月後に長女も死んだらしい。札幌では先月、姉(42)と妹(40)がアパートで死んでいるのが見つかった。知的障害のある妹を看ていた姉が病死し、妹は携帯電話に「111」と発信記録を残したまま凍死していた。昨年11月にガスも止められていたという。
こんなことで福祉国家だといえるのか。街で聞いても「人ごとじゃない」「ガスが止まったら民生委員が見に来ないといけない」「2か月も放ったらかしにしないで」 と切実だ。
司会の小倉智昭「1人暮らしなら周囲も見ているが、家族だとまさかと思いますよ」
さいたま市のケースをリポートした田中良幸も「山奥ではなく住宅地の真ん中ですからね」という。状況を整理すると、一家は「生活保護」も申請せず、住民登録すらしてなかった。市は3人の存在を知りえない。地域とも交流がなく、30代の男性がいることで民生委員の活動の対象外とみなされるという。
田中は餓死者の統計を見せた。2003年 の93件をピークに減ってはいるが、10年でも36件。10年間で625人もいる。
小倉「若い人がいるとね…」
高木美保(タレント)が「周りは見ているというより、関わるのを避けている。また、3人も住民登録もしないというのは交流拒否ですよね。これをどうするか」
田中は外国の行政の実例を上げた。韓国では電気水道が止まったら行政に報告がいく。イギリスは郵便局に福祉事務所あての葉書があって、生活困窮者について書いて送ると福祉担当者が来る。ドイツは家賃滞納の裁判で立ち退きになると、裁判所が福祉担当に連絡する。
小倉「絆は震災だけじゃないですからね」