「全国で鎮魂の思いとともにガレキ処理をして再スタートを切ろう。そういう思いを同じ日本人なら持ってくれると思います」
全体のまだ5%しか進んでいない被災地のガレキの処理で、生出演した細野豪志環境相がこう訴えた。
神奈川県の住民説明会で「帰れ」「帰れ」
復興のネックになっているガレキの推定量は、岩手、宮城、福島3県で約2250万トン。このうち処理済みはわずか5%の118万トンという。環境省はこのうち400万トンを各自治体に引き受けてもらい、2014年3月までに処理を終えたいとしている。
ところが、ガレキを受け入れているのは東京都と山形県だけ。先月(2012年1月)、神奈川県が横須賀市で行った住民説明会では、県側の説明に市民が「帰れ」「帰れ」の大合唱で反発し頓挫してしまった。これでは住民エゴそのもの。受け入れを要請しているのは、安全が確認された岩手や宮城のガレキであって、原発事故現場に近い福島のガレキではない。『絆』とか『日本がんばれ』がむなしく聞こえる。
いつもは政府批判の知事たちもダンマリ
細野はこうも述べている。「安全性についてはまったく問題ないのです。市民の方々が心配されるので、国が放射線量を測定したうえ、安心してもらうために市民の方々にも自ら測定していただく方法をとっている」
万一、高濃度の放射線量が検出されたら、ガレキの引き受けを拒否すればいいだけのことではないか。住民エゴの一方で、ダンマリを決め込む各県知事にコメンテーターの片山善博元総務相は次のような苦言を呈した。
「普段、政府を厳しく追及される知事さんが、この問題についてはあんまり言わない。住民に理解してもらうよう先頭に立って努力してほしいし、もう少し協力の姿勢を示されるほうがいい」
地域主権もいいし地方から国を変えると叫ぶのも結構だが、この問題でダンマリを決め込んでいては、格好の良いことを並べているのは人気取りの単なるパフォーマンスと言われてしまう。エゴがまん延する日本が今、試されている。