1999年4月に山口県光市で起った18歳の少年による母子殺害事件で、最高裁はきのう20日(2012年2月)上告を棄却した。2審(差し戻し審)の死刑判決が確定する。少年が被害者2人で死刑になるのは、83年の「永山基準」(被害者4人など)以来始めてだ。
反対意見の裁判官「実際は18歳を下回る精神的成熟度」
少年法のカベに挑んで「死刑」を求め続けた被害者の夫、本村洋さん(35)は会見で、「少年にやり直すチャンスを与えるのか、命をもって償わせるか、どちらが社会正義なのか悩み抜いた。答えはないのだと思う。遺族としては満足しているが、嬉しいという感状は一切ない」と語った。
この13年間、本村さんは1、2審の「無期懲役」判決に異を唱え、全国犯罪被害者の会の設立に参加。犯罪被害者保護法、同基本法の制定に大きな役割を果たした。これによって、自身も法廷で被害者として意見陳述している。
番組の冒頭で、笠井信輔アナがこの事件の大月孝行被告(30)を初めて実名で呼んだことに「お断り」を入れた。「少年法の主旨に則り、これまで名前を出さなかったが、更正や社会復帰の可能性がなくなったため」という。これがまさにこの事件の核心だった。
犯行当時、大月は18歳1か月だった。これが死刑回避につながり、論争になった。きのうの決定では1人の裁判官が反対意見を述べ、「少年の実際は18歳を下回る精神的成熟度」なので差し戻しすべし(死刑回避)というものだった。少年法では18歳未満は最高刑を「無期懲役」としているからだ。
むしろ焦点はここではないのか。少年法のいう年齢ではなく、精神的に極めて遅れていた少年の犯罪なのだが、だれもこれを表立って言わなかった。この肝心のことが報道でも判決でも抜け落ちたために、議論自体がおかしくなってはいなかったか。この日の「とくダネ」もやっぱりこれには触れなかった。
「少年だからと考慮される場合にも限界がある」(元検事)
司会の小倉智昭「裁判官が一致しないのは珍しいことだそうだが…」
ゲストの落合洋司・東海大特任教授(元検事)は、「やったことに対しての刑罰、これが本来で、少年だからと考慮される場合にも限界があるということを示した。被害者の数だけではない。あくまで事件の中身による」という。
竹田圭吾(ニューズウィーク日本版編集主幹)は「メディアを含めて、被害者感情から厳罰化が流れに見えるが、少年法や精神疾患で責任を問えないケースも含めて、社会全体で整合性を考えてほしいというのが本村さんの願いではないか。自分のように弁の立つ人 でなくても、被害者が救われる手だてをというメッセージ」と話す。しかし、これもまたズバリとはいっていない。新聞もまったく同じ。だから、いつまでたっても、大月がなぜ「ドラえもんが生き返らせてくれる」といったのかがわからない。