「死刑」「無期」分けた18歳未満規定―母子殺害判決の厳密解釈

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   山口県光市の母子殺害事件で最高裁が下した判決は死刑だった。この裁判は1審から5度目の判決という異例の経過をたどった。少年法は「18歳に満たないものに対しては、死刑をもって処断すべき時は無期刑を科する」と定めており、被告は犯行時18歳1か月であったからだ。また、被告が幼年時に父親から虐待を受けていたことや中学1年の時に母親が首つり自殺したなど、情状酌量の面があったことなどもあって判決は揺れた。

犯罪の若年化で厳しく判断

   最高裁は判決理由として、「冷酷・残虐で非人間的な犯行。犯行時少年だったことを十分考慮しても死刑はやむを得ない」と述べ、立ち直りの可能性より冷酷・残虐性を重視した判断をした。

   これについて若狭勝弁護士(元東京地検副部長)は、「今回は18歳と30日でかなり難しいところだが、最高裁の決定は30日であろうと18歳を超えていれば、冷酷・残虐な事件については死刑もあり得るとの判断を下したのだと思う。最近、(子どもの)成育が早いので『18歳未満』を『16歳未満』に下げた方がいいという議論もあることはある」と話す。

反対意見の裁判官「再度、量刑判断をすべきだ」

   しかし、この判決には裁判官4人のうち弁護士出身の1人が「被告は、精神的・道徳的成熟度が相当程度に低く、幼い状態だったことをうかがわせる証拠が少なからず存在する。被告の人格形成や精神の発達に何がどのように影響を与えたか審理を尽し、再度、量刑判断をすべきだ」と反対意見を述べた。死刑判決で反対意見が出るのは異例という。それほど難しい判断だったことは確かだが、判決後、妻と子どもを奪われた夫の本村洋さんもこう述べている。

「嬉しいとか喜びとかそういう感情は一切ありません。社会でやり直すチャンスを与えてあげることが社会正義なのか、命をもって罪の償いをさせることが社会正義なのか、どちらが正しいことなのかとても悩みました」

   厳罰化の流れはやむを得ないにしても、ケースバイケースだ。虐待や母親の自殺による精神的な成熟の遅れについて、「もう少していねいに吟味してもよかった」という専門家の意見もあり、疑問が残る判決となった。

文   モンブラン| 似顔絵 池田マコト
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