民主化波及恐れる湾岸諸国、軍事介入しない欧米
東京外語大の青山弘之准教授は「多くは地方の兵士だ。地元民への発砲に耐えられない。離脱というより脱走に近い」という。目下は勝負にならない。
国際社会が十分に動けないのは、シリアが地域の秩序の要にあるためだ。シリアは長年イスラエルと対峙するレバノンのシーア派ヒズボラを支援してきた。その後ろにはイランがいる。アサド政権が倒れると、ヒズボラが動きだし紛争が他の地域に拡大する危険がある。イスラエルの元情報機関の長も「シリアに権力の空白が生まれると、国際社会は深刻な事態に直面するだろう」という。ヒズボラを抑えるシリアの役割はそのままにしておきたい。
加えて、宗派間の対立が事態を複雑にしている。アルカイダの指導者ザワヒリが「シリアの同胞を救え」と声明を出した。すでに昨年暮れからシリア国内で爆弾テロが続く。アサドの「敵はテロリスト」が現出したのだ。
湾岸諸国はスンニ派が多数で、シリアのスンニ派住民を支援しているが、アサド政権が倒れれば「アラブの春」は次に湾岸諸国に及ぶだろう。一方、イランにしても、ヒズボラ支援はイスラエルを動きにくくするためだ。そのヒズボラが動き出せば自らも火の粉をかぶることになりかねない。
青山准教授「西欧諸国も、リビアと違って、シリアには軍事介入しないという前提だから、暴力をやめさせる圧力になっていない」
犠牲はいつまで続くのか。他の「アラブの春」でもそうだったように、結局、軍の動向がカギになろう。人口比率は軍でも同じはず。ただリーダーがいるかどうか。つまるところ、国の運命は国民にしか決められない。
ヤンヤン
*NHKクローズアップ現代(2012年2月16月日放送「止まらない弾圧 ~緊迫シリア・広がる危機~」