汚染除去できても農地として使えない
土壌そのものの除去技術も開発中だ。大手建設会社がセシウムの吸着が多い粘土の性質を利用して、放射性セシウムを取り除く方法を開発、総合電機メーカーはその粘土に吸着した放射性セシウムをシュウ酸で取り除く方法に取り組んでいる。ただ、たんぼの除染には難点がある。粘土は水分や栄養分を保つために不可欠で、農家は「粘土を痛めつけるともとの粘土に戻れるかというとちょっと難しい。粘土の働きができなくなったらダメです」という。
キャスターの国谷裕子は小山准教授に「長年かけて作られる農地の構造を壊すということは、農地の持っている価値がなくなるということですか」と聞く。
「農地は肥沃な表層部分を1センチ作るのに100年かかるといわれています。除染で放射性セシウムがなくなったとしても、肥沃な部分がなくなってしまっては農地として利用できない。それでは除染する意味がなくなってしまいます」
国谷「では、どのようなプロセスで有効で効率的な技術の利用が実現できるのでしょう」
国谷のこの疑問に、小山准教授の答えは気の遠くなるような切ないものだった。
「土壌を剥ぎ取るよりは、農作物に放射性セシウムが行かないような技術の開発や、実際に放射性セシウムを吸った農作物を加工段階で少なくするなど、非食用の農産物を作る方が有効だと考えています」
食べないのに農作物を作り続けるというのだから、原発事故が人間の暮らしにいかにとんでもない事態をもたらしたかわかる。
田んぼの除染技術は先の話のようだが、最後に小山准教授は汚染水の浄化技術など、成果が上がり始めている技術の活用についてこんな指摘をした。
「現場の状況に合わせて最新の技術を選択できる体制が必要で、そのためには研究開発から普及、営農指導に至るセンター機能、拠点づくりが重要です」
復興庁に課せられた課題は大きい。
モンブラン
*NHKクローズアップ現代(2012年2月15日放送「水と土を再生させろ ~新技術が除染を変える~」