インフルエンザの猛威が止まらない。2月5日(2012年)までの1週間に医療機関を訪れたインフルエンザ感染者は211万人と過去最悪となった。一方で、2年前から1回の服用で高熱が下がる新薬が登場している。「画期的な薬ができたのに、なんで猛威が止まらないのかと思いますよね。ところが、この新薬に思わぬ落とし穴があって、逆にインフルエンザを広めているんです」と科学文化部の田中陽子記者が報告した。
1回の処方でたちまち解熱のワナ
東京・文京区の宮田健史君(小3年)は高熱を出し、近くの小児科医でインフルエンザと診断された。処方されたのは、昨シーズンから販売されている治療薬「イナブル」だった。母の宮田康美さんは言う。
「お薬を戴いたのが金曜日で、翌日の土曜日には熱が下がっていました。凄く早かったです」
実は、この速攻型解熱がインフルエンザ大流行の落とし穴だと小児科医師澤田雅子さんは警告する。
「1回の処方で熱は下がっても、ウイルスの排出は約1週間続きます。インフルエンザが治ったと錯覚して、外出して他の人に感染を広げてしまうんです」
葛飾区・金町小学校の養護教師岩切直子さんは、「治療薬がない頃は、1週間休むのが当たり前でした。今は新しい治療薬の影響で4~5日で再登校の子供が増えています。まだ感染力のあるウイルスを持った子供たちが再登校すれば、感染は一層広がります」と訴える。
熱下がっても「会社に来るな」「学校行くな」
金町小学校は感染を広げないための対抗策として、学級閉鎖を通常の3日から4日に延長しているという。
「ウイルスは7日程は体内に残ります」と言う田中記者の報告に、柳沢秀夫解説委員は「熱が下がったら治ったと思うよね」とうなずく。
井ノ原快彦キャスター「熱出して仕事休んだ後に『僕大丈夫ですから』って早々と出てくる人いるじゃないですか。あれがいけないんだよね」
治りかけなのに会社や学校に出てくる人にはしばらく近寄らないこと。また、ムリして出社しても、会社も同僚も「頑張ってるな。仕事熱心だな」なんて見てくれない。迷惑顔されるだけである。
インフルエンザ流行は3月下旬までがピークで、これからはA香港型に加えてB香港型も広がりそうだ。
(磯G)