被災地のハンディを背負いながらスポーツに励む高校生を対象にした作文コンテストがあった。全国高等学校体育連盟が「震災とスポーツ 私の体験」のテーマで募集した。先月1月(2012年)に表彰式があり、最優秀作品は本人の朗読によって披露された。
東北総体100メートル平泳ぎ3位―祖母の遺影にやっと報告
宮城県立石巻高校3年の阿部彩果さん(18)は、震災で祖母やち子さん(当時77)をなくした。やち子さんの生きがいは彩果さんの水泳だった。5歳から水泳を始めた彩果さんの活躍をビデオで見るのを何よりの楽しみにしていた。そんな祖母のために、東北総体で優勝して金メダルを首にかけてあげたいと心に誓っていた。
だが、3月11日の震災が発生。通っていたスイミングクラブは壁が落ち、プールには大量のヘドロがたまった。3日間練習を休むと取り返すのに1週間かかるのが水泳だ。しかし、1か月も水の中に入ることができなかった。福島県相馬市のプールを利用できることになり、週末に片道2時間をバスで通い始めたが、ブランクの影響は想像したより大きかった。母の勧めで5月の参加したが、結果は予選落ちに終わった。「震災は言い訳にならない」ということを身にしみて学んだ。
7月、いよいよ東北総体。種目は100メートル平泳ぎ。決勝に進出し、ラスト10メートルで懸命にスパートし見事3位に入った。表彰台では涙が止まらなかった。金ではなく銅メダルだったが、やち子さんの遺影に報告することができた。
亡き父親の口癖「強くなれ」に励まされバスケに打ち込む高校2年
岩手県立黒沢尻北高校2年の佐藤諒君(16)は震災で父親を失った。「男は強くなれ」が父の口癖だった。試合にはいつも応援にきた。その言葉を思い出し、強い人間になろうとバスケットに励んでいる。
2人とも将来は教師をめざしているという。司会の加藤浩次は「阿部さんも佐藤君も強いですね」と話す。コメンテーターのロバート・キャンベル(東大教授)も「悲しい経験から目をそらさず、自分を強くしていくことで、支えてくれた周りの人に報いようとしている」と感心しきりの様子だった。