「週刊人物大辞典」コーナーで17年前 に86歳で亡くなった宮大工・西岡常一さんを取り上げた。法隆寺の改修や薬師寺の再興にかけた生き様がドキュメンタリー映画になって明日4日(2012年2月)から公開されるという。
「最後の宮大工」「法隆寺の鬼」と呼ばれた西岡さんは、厳しい仕事ぶりだけでなく、残した言葉の数々がツイッターで伝えられ、いまやフォロワーが7000人以上になる。映画は「鬼に訊け(宮大工西岡常一の遺言)」だ。
「人間も同じやね。甘やかされたら大したもんにはならん」
昭和9年から20年間続いた法隆寺の大改修で棟梁を務め、すべての伽藍の解体修理を行った。他にも法輪寺の三重の塔や薬師寺の再建にも携わった。薬師寺では唯一残っていた東塔を実測して、わずかな資料を基に図面を作成し、飛鳥時代の工法を再現した。映画では残された映像と言葉が並ぶ。
「実測いいましても、解体してみないと本当のことはわからん。命につながる心得がないと本当の実測はできない。勘の仕事ですな」
代々、法隆寺の棟梁の家柄。祖父の「宮大工は民家を建ててはならない」という教えを守り、 生活は楽ではなかったという。寺社の仕事はいつもあるわけではないからだ。建築学者とも衝突を繰り返し、法隆寺金堂の建築様式をめぐっては大論争をやった。「学者は様式論です。あんたら理屈いうてなはれ。仕事はわしや。学者同士けんかさせとけ。こっちは思うようにする」と言い放った。いつしか「法隆寺には西岡という鬼がいる」といわれるようになった。
1990年の薬師寺再建現場の映像がある。珍しく弟子に注意を与えている声も入っている。「技を見て盗み、考えて覚える」が基本で、滅多に教えることはなかったという。「自分からして見せな、それが一番ですな。なんぼ上手に文句いうてもあきませんわ」「自然に育った木と人工的に手をかけられて育った木とでは全然違います。人間も同じやね。甘やかされたら大したもんにはならん」
技を盗み、「自分で考えて答えを探しなはれ」
こうした言葉がいまツイッターにぎっしり載っている。これが人々の心をつかむらしい。
「時間は増えてもええから、ホントのことをやってもらいたい。ごまかしなしにホントの仕事」。弟子の宮大工、石井浩司さん(51)は「棟梁はそれしかない。以来ずーっと、ホントってなんやろなんやろと仕事をしてる」という。
「木も人間も自然のなかでは同じようなもんや。どっちが偉いゆうことはない。自然と共に生きているのでなければ、文化とはいえませんな」
「自分で考えて答えを探しなはれ」
司会の羽鳥慎一「スポーツでも同じかもしれない」
長嶋一茂(スポーツキャスター)「野球でも技術は教わるものじゃなくて盗むものだといいますね。言葉でいっても身にならないことは、超一流はみなわかっている。石井さんも考えてわかってるんじゃないか。いいなと思いますね」
言葉はまだある。「棟梁は間違えれば腹を切るんやから、下の人は恐れずに思い切ってやってもらいたい」「百個をひとつに統べるのが棟梁の仕事。その力がないと自覚したら、慎み恐れて棟梁の座は去ります」
吉永みち子(作家)「腹を切らないリーダーがいかに多いか。引き際の話でも、居座ってるやつがいかに多いかってこと」(笑い)
藤巻幸夫(ライフスタイルプロデューサー)「たくさんの社長がいま見てるんじゃないか」