玉川徹(テレビ朝日ディレクター)が「そもそも総研」コーナーで、原発がすべて止まっても夏の電力は足りるのかどうかに切り込んだ。政府の国家戦略室が昨年7月(2011年)に出した試算では、今夏は「9%」不足となっている。以後の報道はみなこれが土台になっているが、違う試算もあった。
戦略室にはもうひとつ民間出身者によるチームがあって、そこが出したものだ。元内閣審議官の梶山恵司氏(富士通総研)は「足ります」という。政府発表の試算は、極端な前提に基づいているので、それを再計算すると、逆に2%から6%くらいのプラス、つまり足りるのだというのだ。
民間チームが計算したら「2・8~6%の余裕あるはず」
司会の羽鳥慎一「試算が2つあったということですか」
玉川は2つを並べて見せた。経産省のチームが出したものは、需要が1億7954万キロワット、供給力1億6298万キロワットで、差し引き1656キロワットの不足(9.2%)となっている。一方、民間チームの結果は需要が小さく、供給力が大きいから、1006万キロワットのプラス(6%)だ。民間チームにはもうひとつの予測があって、それだと差し引き482万キロワット(2.8%)のプラスだった。
なぜこんな違いがあるのか。経産省チームの試算には再生可能エネルギーが含まれておらず、火力発電所が定期点検することになっていたり、需要を猛暑の2010年の数字にしたりと、極端な設定で需給を恣意的に逼迫させている疑いが強い。
松尾貴史(タレント)「再生可能エネルギーをゼロとしているということは、経産省は今後もこれを認めないということ?」
玉川「そう受け取られてもしょうがない」
「政府は調査機関じゃないから全部は出さない」(内閣官房審議官)
なぜこれらが公表されなかったのか。玉川は当時の菅首相の側近、下村健一・内閣官房審議官に聞いたところ、「ボクもその試算は見ました。しかし、政府は調査機関じゃないから、全部出すわけではない」と、シレっと言う。
玉川「脱原発で、菅さんとしては有利なデータではなかったのか」
下村「そこが政権の責任で、菅さんは政府として本当に脱原発を進めるには『出したいけど、出せない』気持ちだった。もしこのデータが間違ったりしたら、必要以上に不信が生まれると。苦渋の選択だった」
変な理屈だ。両方出しておけばすむことだ。そうすれば、いままかり通っている試算の前提がおかしいこともはっきりしただろう。梶山氏も「もう少しわかりやすく発表できた」という。
松尾「菅さんがそんなに慎重な人だとは思えない」
赤江珠緒キャスター「あとで発表する予定だったのか」
玉川「足りないと言って足りたら問題ないが、逆だと大変なことになる。だからそれを固めていたら、その間に政権が終わってしまった」
しかし、民主党政権は続いているわけだから、結局は官僚に丸め込まれてしまったという ことか。このあたり、玉川のいつもの切れがいまひとつだった。