日本からの輸出が5年前の4倍と急成長している輸出品がある。盆栽だ。盆栽が日本で始まったのは平安時代で、中国・唐の「盆景」が日本へ入ってきた。江戸時代になると、武士の副業として盛んになり、明治以降も盆栽は粋な趣味であったが、培養管理・育成、水やりなどの手間と長い時間が掛かるため、次第に愛好者は時間的余裕のある熟年層が多くなった。年寄り臭い趣味とされてきた盆栽が、なぜ海外で人気を博しているのか。
イタリア・ミラノの盆栽業者は年商3億円
ゲストの森隆宏氏(さいたま市大宮盆栽美術館盆栽技師)は、「環境破壊や地球温暖化などの問題で、自然の大切さを世界中が感じています。その自然を身近に感じられる盆栽が魅力となっているのではないでしょうか。盆栽は見る位置によって風景が変わります」と話す。
盆栽が海外でブームとなったのは1990年代からで、去年(2011年)11月に高松で開かれた盆栽の世界大会には、海外の愛好家やバイヤー約1000人が競うように本場の盆栽を買い求めるほどの盛況ぶりだった。
フランスで開かれた展示会でも、愛好家が日本国内なら数千円ほどの盆栽が高値で引き取られたり、イタリア・ミラノには年商3億円という盆栽販売業者もいる。「盆栽大学」という市民セミナーを開き、受講生からは「もっといいものが見たい」「生産地で栽培方法を是非見たい」などの声が上がる。
日本国内販売は10年で半減
その一方で、盆栽の国内販売はこの10年間で半減し、盆栽農家は「国内よりも海外の愛好者の方が目が肥えている。これからは海外でもっと人気になるような盆栽作りに挑戦しなくては」という。
柏木博(武蔵野美術大学教授)はこう話す。
「盆栽が海外に広まることは嬉しいことですが、盆栽そのものだけではなく、盆栽が持つ文化・歴史も同時に広める必要があると思います。盆栽は自然との共生の象徴で、日本人の心のよりどころであることを忘れてはならない」
キャスターの国谷裕子「これまで、盆栽は床の間の飾りとされていましたが、今後は和洋折衷の盆栽も誕生してくるのではないでしょうか」
とにかく、日本国内では盆栽に接する機会が極端に少なくなっているのが人気低下の原因だが、近ごろは若い人に愛好家が広がっていて、ネットで自慢しあうのが流行っているらしい。
文・ナオジン
*NHKクローズアップ現代(2012年1月30日放送「『和の心』を輸出せよ~世界に広がるBONSAI~」)