言い間違えたら「降格」「粛清」
アジア放送研究会の山下透会長によれば、リさんの後継者と見られているのは、最近、声明文などを読んでいるリュ・ジョンオグさんという。リさんと同じく女優出身だ。女優出身が重用されるのは、ニュースの内容に沿った伝え方が要求されるので、演技力、表現力、伝達力が必要だからだ。
北朝鮮のアナウンサーの教科書というべき「放送員話術書」というものがある。それには「報道話術の使命は正確に知らせることである」とある。この点は日本と変わらないが、「要請文、糾弾の形象は雄弁的でなければならない」「いかなる場合であれ、アナウンサーは言葉から気迫を失ってはならない。敵との闘争においては鋭利な攻撃武器となることを要求する」など、お国ぶりを表すものもある。
役割が重いだけに失敗は許されない。金日成主席死亡のとき、涙を見せず伝えたアナウンサーは一時降板させられた。金日成の死を金正日の死と間違えたアナウンサーは、その後姿を消したという。
コメンテーターの竹田圭吾(国際ジャーナリスト)は「まあ、アナウンサーというよりアジテーターですからね。ウソをつかなければいけない仕事ですよね」と突き放した見方をしていた。
文
一ツ石| 似顔絵 池田マコト