おカネや出世ではない「働くための目的」
「ゲームの力は大きいですね」と感心する森本に、情報社会論が専門という濱野智史は次のように話す。
「一番すごいところは、人をやる気にさせるところにある。クルマの例だと、自分の現在の運転技術が下手かうまいかを可視化してくれ、学習させてくれることだと思う」
森本「ゲーム化しなければいけない背景には何があるのでしょう」
濱野「日本社会全体が長い不景気にあって、今後も高い成長が望めない。そういう時代に、おカネを稼ぐために仕事をする、出世をするために仕事をするということにやる気が出ないというか、リアリティーが持てない。
仕事をするのは辛い、何かモチベーションを与えるものはないか。そういうなかでゲーミフィケーションが注目されている背景があるのだと思います」
たしかに、運転技術やリハビリなど、課題がはっきり設定できて短期で終了できるものは、ゲーム感覚でモチベーションを維持するのは有効だろう。濱野氏の背景説明も納得できる。
しかし、単純なゲーム感覚の手法で社会を変えられるのかとなると疑問だ。ゲーム感覚の最たる野球でさえ、ダルビッシュ有投手は「日本の野球はフェアでなくなった。モチベーションの上げるのが難しくなった」とメジャー入りを決めた。ゲーム化の手法で一時的にモチベーションを上げ得ても、社会を変えるなどやはり戯言、限界があるように思える。
モンブラン
*NHKクローズアップ現代(2012年1月25日放送「ゲームが未来を救う!?~広がるゲーミフィケーション」)