「中村会長院政」でプラズマテレビ拡大路線修正できず
今のパナソニックの株価は611円(1月17日)。サムスン電子の時価総額はパナソニックの1・5兆円に対して10兆円。もはや勝負ありか。こうしたパナソニックの凋落の原因は、中村邦夫現会長という存在が大きすぎて世代交代を遅らせてしまったこと、組織風土が旧態依然の思考様式から脱却できないことだと厳しく批判している。
中村院政の下、今の大坪文雄社長は「工場長型であって経営者ではなかった」という批判が社内にある。柱であるテレビ事業の躓きは、中村がぶちあげた「プラズマテレビに社運をかける」というプラズマ拡大路線だった。液晶との戦いは無惨なパナソニック側の敗北となってしまった。2ページコラム「中村邦夫という聖域」で、中村がビジョンに優れたリーダーだったら院政を敷いてもよかったが、彼にはそれがなかった。そのために軌道修正ができず、誤った方向へパナソニックを走らせてしまったとしている。
世界でパナソニックが勝てる商品は「僅少」だ。カーナビ、冷蔵庫、家庭用エアコン程度しかない。次世代テレビといわれる有機ELテレビでもサムスンに大きく水をあけられ、パナソニックはこの分野へ参戦もできず「不戦敗」。ブランド力が低下し、グローバル展開もままならず、高齢化(平均年齢44.6歳)に悩むかつての巨人の姿は、トヨタの将来を暗示しているようでもある。次世代のクルマといわれる電気自動車においても苦境に立っている。なぜならパナソニックの生産しているのはニッケル水素電池で、車搭載用電池はリチウムイオン電池が主流なのだ。特集の最後をこう結んでいる。
「車搭載用リチウムイオン電池の開発は、世界で始まったばかりである。パナソニックにも等しく与えられたチャンスを生かせるかは、ひとえに、首脳陣の決断にかかっている」
東洋経済という経済専門誌がこうした特集を組んだことに拍手を送りたい。いまでもパナソニックは国内での広告出稿で最大の企業である。一般週刊誌でこれだけ厳しい批判力をもった特集が組めるだろうか。