1月24日(2012年)に開会した通常国会は消費増税が焦点だが、話し合いを拒み続ける野党を前に、野田首相が施政方針演説で賭けに出た。過去の福田首相、麻生首相の演説を引用して、「(自民党と)目指すものは同じだ」と事前協議入りを促したのだ。うじうじした政局よりはガチンコの方が有権者には面白いが…。
自民党首相の演説引用した正面突破作戦
野田はまず「重要課題を先送りしてきた『決められない政治』からの脱却」「政局ではなく大局を見据えよう」と呼びかけ、「与野党がよく話し合い、国政を動かしていくことこそ政治の責任だ」と述べた。ここでこう付け加えた。「これは4年前、福田総理の施政方針演説の一節です」。続いて、「給付に見合った負担が必要です」。これも3年前の麻生元首相の演説だった。そして、「歴代首相は持続可能な社会保障改革を訴えてこられた。私が目指すものも同じです」とやった。
引用された麻生は「わさびが効いてないお寿司」。福田は、「いいことを 言ったね、ボクも。でも、あの頃を思い出すとね、(民主党は)むちゃくちゃにひどかった」。当時野党だった民主党はそれらにことごとく反対してきた。野田も2009年の総選挙で「マニフェストに書いてあることをやらないで、書いてないことをやってる」と消費増税を批判していた。これが動画サイトのYouTubeに流れて、現在言ってることと逆だと攻撃されている。まさにブーメラン。
当然、野党の反応もきついものになった。自民党の谷垣総裁は「白々した気持ちだ。事前協議 に応じるつもりはない」。公明党の山口代表も「自らを顧みる姿勢が足らない」とにべもない。
そこを敢えて野田は切り込んだわけだ。この手法は首相自身のアイデアだという。その意図は何か。状況をはっきりさせることで、野党を揺さぶり、解散を視野に入れれば、正面突破作戦といえないこともない。ただ、民主党内がそれについてくるか。岡田副総理は「野党時代にやったことでは、われわれもいろいろ反省はある。まあ これでそれぞれが与党野党経験したわけだから、そろそろお互い国民の立場に立って、しっかり前に動かすことを考えないといけない」と、珍しく笑いながら、いささか余裕の表情だった。