「(日本では)モチベーションを保つのが難しくなってしまった」
メジャー移籍の理由は日本で話すとしてきたダルビッシュ有投手(25)が24日(2012年1月)、7年間プレーしてきた札幌ドームでファンを前にこんな別離の言葉をもらした。
午後の気温が氷点下3.5度、午後4時からの退団会見を見ようと詰めかけたファンの長蛇の列、その数1万人を超えた。なかには涙ぐむ80歳の高齢の女性もいて、「隅のほうでいいから最後を見たいと思って…。頑張ってください。世界一になって」と語る。
「フェアな対戦をしていないんじゃないか」
ダルビッシュが「寒い中、並んで下さったファンの方もいると聞いてすごく心配しているんですけど、大丈夫ですか」
「大丈夫で~す」
氷点下の中、ここだけは温かいぬくもりがあった。
「自分がメジャーに行くって選んだ理由をファイターズファンの皆さんの前で、一番にちゃんと言いたいと思っていました。今日ここでしっかり言いたいと思いますので聞いてください」
「僕はもともとメジャーは行きたくない、行くなら野球をやめますと言っていました。その気持ちは今も変わっていないというか…。
一番の要因は僕は野球選手であって、その仕事は相手バッターを倒したいという強い気持ちで向かっていくのがすごく好きで、それが仕事と思っていました。その相手球団の選手から試合前に、『このカード投げないでよ』『もう無理だよ』『打てないよ』とか、そういう言葉を冗談でも聞いていて、だんだんフェアな対戦をしていないんじゃないかと引っかかっていた。相手を絶対に倒してやるという気持ちできて初めて勝負が成り立つ。勝負したいんですよ。
野球をやる上でモチベーションを保つのが難しくなってしまった。それに日本選手の評価がアメリカで低くなってしまった。日本の野球が下に見られるのがすごく嫌だったしそれが重なりました」
メジャーは「夢の舞台」ではなく「勝負の場」
メジャーが夢の舞台ではなく勝負の場だというダルビッシュの言葉を、満ち足りて覇気のなくなったプロ野球界のプレヤーたちはどんな気持ちで聞いていたのか。
最後にダルビッシュは「7年間支えられっぱなしでありがたい限りでした。皆さんがいなければ今日ここにいないですし、本当に感謝しています。最終的に、またここに戻ってこられたらうれしいなと思います」という言葉で締め、丁寧に何度も手を振り会場を後にした。
キャスターのテリー伊藤「自分の思いを語ったいい会見でしたね」
司会の加藤浩次「公言したんで、大リーグでは活躍しないとダメという状況になってきましたね」。
文
モンブラン| 似顔絵 池田マコト