<マイウェイ 12000キロの真実>第2次世界大戦末期、史上最大の上陸作戦として展開された「ノルマンディー上陸作戦」で、連合軍側に捕虜となったドイツ軍将兵の中に東洋人がいた。連合軍に尋問された男はにわかには信じがたい話をはじめる。
1928年、日本統治下の朝鮮で、長谷川辰雄(オダギリジョー)とキム・ジュンシク(チャン・ドンゴン)は互いにマラソンでオリンピックを目指す良きライバルであった。しかし、ロンドンオリンピックの選考会のある事件をきっかけに不仲になり、さらにジュンシクが日本軍に強制徴用されてしまう。そこから2人は戦争に翻弄され、憎しみ合いながらも相手を認めていく。
日本軍将兵からソ連、ドイツの捕虜となってまた戦場へ
『シュリ』『ブラザーフッド』で知られるカン・ジェギュ監督は、『プライベート・ライアン』を越えるノルマンディー上陸の戦闘シーンを撮った。240日をかけてアジアからヨーロッパへと大陸横断して撮影を敢行し、韓国映画史上で最多額の制作費を注ぎ込んだ国あげての超大作である。
日本の関東軍に徴用されたキムはそこで長谷川と再会するが、ノモンハン事変でともにソ連軍の捕虜となってしまう。2人は日ソの捕虜交換に応じず、今度はソ連兵士としてヨーロッパの対ドイツ戦に投げ込まれてしまう。しかし、ここでもドイツ軍に捕らえられ、さらにドイツ兵としてノンマンディー守備に贈られたのだった。
激しく憎み合っていた長谷川とキムだったが、日本軍、ソ連軍、ドイツ軍とどこの軍隊でも使い捨ての消耗品として扱われ、戦争の不条理に翻弄される自分たちに共通の運命を感じて次第に友情を育んでいく。まあ、ありがちなストーリーである。カン監督は「戦争の加害者と被害者を主人公に物語が出発します。しかし、物語が進むにつれ、それは何も意味ないことだとわかってくると思います。戦争の末路はだれもが心に傷を負った敗者なのではないでしょうか」と語っている。
ステレオタイプで描かれる日本人
ただ、描かれる人物像はかなりステレオタイプだ。日本人は傲慢で残虐だし、ロシア軍は人間への尊厳がみじんもない。ドイツ軍は冷酷なだけである。それだけに日本軍の描き方も、公開切腹やレイプなど日本人が見ると過剰とも思える描写が続く。そんな日本軍将兵ばかりではなかったからこの物語が成立しているわけなのだが、そのあたりの矛盾を残したまま映画は終わる。カン監督がステレオタイプで描いた狙いはどこにあるのだろう。韓国内向けということももちろんあるだろうが、欧米での公開を意識して日本人を「わかりやすい設定」にしたことが大きい。日本人の乱暴な描き方には反発も起きそうだ。
おススメ度☆
川端龍介