おととい17日(2012年1月)の芥川賞受賞会見で、田中慎弥氏が吐いた「もらっといてやる」は選考委員だった石原慎太郎・東京都知事への痛烈な皮肉だったが、きのうこれを聞いた知事は破顔一笑、「ハッハッ、いいじゃない皮肉っぽくて」と全然負けていない。2人の毒舌はまだ続きそうだ。
「もらってやる」「辞めてやる」
田中の発言は「断って気の小さい選考委員が倒れたりすると、都政が混乱しますので、知事閣下と東京都民各位のために…」という前置きがあった。その前段は、石原が芥川賞候補作品について「自分の人生を反映したリアリティーがない。つまり心身性、心と身体が感じられない。バカみたいな作品ばかり」と言っていたことだ。田中の反応を聞いた知事は、笑った後に「オレはむしろ彼の作品を評価したんだけどね」と言いながらも、「読み物としては読めたが、ある水準に達してないね、全然。あれ(選考)は○X△ で付けるんだけどね、ボクは△しかつけなかった」と手厳しかった。
石原は「あれはもう辞める」と芥川賞の選考委員の辞任を口にした。「もうちょっと自分の文学にとって、人生にとって刺激を受けたいね」「いつか若い連中が出てきて、足をすくわれるという戦慄を期待したが、全然刺激にならないからもう辞めます」
56年前、23歳で「太陽の季節」で颯爽と登場して以来、ずっと陽のあたる道を歩んできた石原と39歳の田中は好対照だ。会見でも「5回目で受賞はまぬけです」なんていっていた。口ではいい勝負。
司会の羽鳥慎一は「完全にぶつかってますね」と嬉しそうだ。立花胡桃(タレント)も「久しぶりに面白い作家が出てきた」と言う。
羽鳥「もらっといてやる。辞めてやるというんだから」
松尾貴史(タレント)「田中さんの方に肩入れしたくなる」
玉川徹(テレビ朝日ディレクター)「石原さんにちょっとだけ共感できるのは、これだけ小説があふれているのに、自分の人生にまで影響を与える小説ってどれくらいあるだろうということでしょうね。読み終わって、時間つぶしになったなと、そういうのばっかり」
問題は受賞後だ。その後もさすがという受賞者はホントに少ない。石原にしたって…、別のバスに乗った口だからね。