女好きの男と恋に臆病な女…気になるステレオタイプ
味覚が失われた後の風呂場でのラブシーンはとても魅力的だ。2人でソフトクリームのように浴槽の泡を舐め、チョコレートのように石鹸を食べてみるなど、まさにこの設定ならではの描写で、体験したことのないシチュエーションでありながらも、それらの行動にどこか共感できる。絶望の中でも楽しみや希望を見つけて生きていこうとする2人の健気さが胸を打つ。
ただ、監督・脚本家の狙いだとは思うが、伝染病の突拍子のない設定に比べて、人物のキャラクター造型があまりにもステレオタイプだったのが気になる。この映画から伝染病という設定を抜いたら、女好きだが本当の愛を知らないモテる男と、過去の失恋を引きずって姉に励まされる女の恋愛という、どこかで観たことのあるようなラブコメ作品になりそうだ。伝染病の設定に頼り過ぎていて、人間ドラマとしては物足りない。まあ、大人向けの童話を読むような感覚で観るといいだろう。それならステレオタイプのキャラクターも多くの人に共感が得られるだろうし、非科学的な部分も気にならない。
おススメ度☆☆☆
野崎芳史