脳梗塞でも名前も身元もわからず「川越太郎」
国谷裕子「どうやったらポジティブになれるのでしょうか」
湯浅「生活保護は必要条件だが、十分条件じゃありません。場所作りが必要なんです。自分が必要とされる存在だと感じられる場。それと孤立させないためのコーディネーター。数が足らないから、NPOの支援も考える必要があります」
病気や介護となるとさらに深刻だ。東京・北区の神谷病院は入院患者の半数以上が生活保護受給者である。ここに埼玉の施設から来た患者がいた。脳梗塞で意識が戻らないままで、名前もわからない。川越で救助されたので「川越太郎様」となっていた。
病院で受け入れきれない部分をNPOが担っている。川崎の「SSS」は首都圏131か所で4500人を受け入れる。月の費用は14万円。生活保護費のほぼ全額だ。しかし、これらの人たちはたとえ治っても行き先がない。「社会全体の受け入れる力が必要」と湯浅はいう。
「具体的にはコミュニティー作りです。ちょうど震災の被災地と同じで、いろんな人が共に生きていく、排除はしない、サポートを受ける人も地域生活を続けられるようなことです。日本はこうした蓄積が乏しい。支え合いの力を高めることが求められているのです」
湯浅は「社会のケア力」ともいっていた。響きはいい。が、病院のベッドで「こうして片隅で死んでいくんだ」とつぶやいた老人の悲惨。生活保護費を食い物にする現実もある。自分もいつそうなるかとおびえる予備軍もいるはずだ。
*NHKクローズアップ現代(2012年1月12日放送「『無縁老人』」をどう支えるか~生活保護急増の中で~」)
ヤンヤン