「チャンバラ映画そのままに古臭くて我慢できないもの」
10年前に太秦で藤沢周平の「たそがれ清兵衛」を制作した山田洋二監督はこんなことを話す。
「太秦の撮影所で仕事をするのが怖かった。あそこにはすごいベテランの技術者がいっぱいいる。そういう人たちにバカにされるのではないかと。 でもね、驚くことも多かったですね。昔の人はマッチの代りに火打ち石で火をつけた。そんなことができるのかと思っていたら、小道具の若い人が目の前に道具を持ってきてチョ、チョとやって、アッという間に行燈に火を点けた。一事が万事そんな昔を知り尽くした人山田監督に国谷が「見るのは高齢者ばかり。おカネがないと言われていますが、どうしてこんなに衰退したのでしょう」と尋ねた。がいて初めて時代劇ができるんだと学びましたね」
「時代劇にお金がかかることはあるけれども、それは第一の問題ではない。より新しい物をつくらなければいけない。今の観客が納得するものに変えていかなければいけない。 ところが、昔からのチャンバラ映画の伝統がそのままきちゃっている。古臭くて我慢できないものもいっぱいある。その内容をいかに新しくするかという努力、それはつくる側の僕たち、脚本家、演出家、プロデューサーに要求されているのではないですか」
葵の紋の印籠を見せ悪を懲らしめる天下の副将軍のあの単純なパターンを、42年もつくり放送し続けてきた我慢強さには敬意を表したいが、どれほどの高齢者が飽きずに見ていたか。さすが山田監督、よく分かっている。
*NHKクローズアップ現代(2012年1月11日放送「時代劇 危機一髪~伝承の技は守られるか~」)文
モンブラン