「さんいちファーム」という。瀬戸誠一さん(62)、平山一男 さん(65)、瀬戸健一さん(52)と、名前に「一」がつく3人の農家が作った「農場会社」がきのう11日(2012年1月)に仙台に誕生した。津波で家も畑も失ったのみならず、塩害で耕作もできないゼロからの農業再開宣言だ。「日付にも1を並べた」
家も畑もやられてカネもない…まったくのゼロからの出発です
3人は仙台市宮城野区の米・野菜農家だ。津波で全てを失ったが、農業以外にできることはない。農地は海水と土砂、がれきに浸って耕作はできない。元へ戻すには何年もかかる。金もない。
「ゼロの人間に金を貸す人はいないわな」(瀬戸誠一さん)
「われわれだけ、土地残されている」(瀬戸健一さん)
平山さんは昨夏に野菜を作ってみたが、「塩害とドロドロのヘドロで」ナスは病気、トマトは完全にダメだった。
そこへ、東京の環境コンサルティング会社「リサイクルワン」が野菜の「水耕栽培」システムを提案した。塩害の土地でも施設さえ作ればできる。国や県から補助金も受けられる。「われわれがやれば、新たな若い人たちもやるようになるだろう」(平山さん)
このシステムは、野菜の根の部分の温度をコントロールして、水耕栽培でトマト、サニーレタス、ツッコラ、サンチュ、パセリなどを毎日出荷できる。水耕の土台となるテーブルの原料には、震災のがれきの廃プラスチックを使った。ただ、いままでやってきた農業とは全く違う。戸惑いも不安もある。
「溶液栽培の難しさ、怖さもわかっているから、コストもあるから迷った。もう農業ができないと思ったときだから、乗るしかない」と健一さんはいう。誠一さんも「ここで足踏みしたら負け。生活に、人生に勝つためには前へ進む」と話す。
事業費3億5000万円。国・県の補助受けても1億円の借金
司会の羽鳥慎一「復興への心意気が伝わってくる」
取材した玉井新平アナが「いつかは先祖代々の農業に戻りたいという思いがあります」と伝える。仙台では941戸の農家が被害を受けたが、農業を続けたいという人が77%。しかし塩害のために実際には再開できていない。
そこで出てきたのが「水耕栽培」だが、これには金がかかる。事業費は3億5000万円。7割を国と県が出すが、3人で1億円近い借金を背負う。
松尾貴史(タレント)「自然と向き合ってきたのが、今度はそれとは関係のない新しい方法でしょう。年齢も60代の方だし、成功してほしい」
ここで玉川徹(テレビ朝日ディレクター)が「思い出しました。大学のとき水耕栽培の研究してたんです」といい出した。「あれは農業というより工業に近い。24時間管理した工場なんです。だから、 将来農業に戻るというのだと、どうかなという気がする」という。
最初にやる3人は採算が取れるだろうが、全体に広げるのはどうかという。それよりも、電池のパネルや油の製造に土地を貸すとか他の道もあると、具体的だ。