「新聞が使う独特の言い回しに『○○日、分かった』という用語がある。普通の文章では、まずないと思うが、これをいったいどう読んだらいいのか」
これは長谷川幸洋東京・中日新聞論説副主幹が「週刊ポスト」で連載している「ニュースのことばは嘘をつく」からの引用である。これに続けて、沖縄防衛局の田中聡局長が報道陣とのオフレコ懇談で、米軍普天間飛行場の移設先の環境影響評価を防衛相が明言していないことについて聞かれて、「犯す前に犯しますと言いますか」とふざけた発言をしていたと各紙が報じた例を出している。当初、懇談に出ていた社はどこも書かず、「琉球新報」だけがすっぱ抜くのだ。それを後追いする新聞各紙が「分かった」などという摩訶不思議な新聞用語を使っている。
「一部週刊誌によると…」後追い新聞記事のズル
今回のケースでは琉球新報が報じたと書いてある新聞が多かったようだが、ひと昔前までは第一報を報じた他社の名前は出さないのが新聞の慣習だった。オリンパス事件を最初に報じたのは「FACTA」という会員制月刊誌だが、FACTAによればと出したのは外国メディアで、日本のメディアはほとんど出さなかった。
ポストにもこれまで多くの特ダネがあっただろうが、後追いした新聞はせいぜい「一部週刊誌によれば」と書く程度である。長谷川は見栄を捨てて、後追いしているのだから雑誌名は出すべきだと新聞の姿勢を批判している。
この欄でも何度か書いているが、週刊誌を含めた雑誌の多くは新聞に広告を打つため、発売の数日前に広告用のタイトルを提出しなければいけない。そこでどんなものをやっているのか新聞側に知られてしまうのだ。ひどい新聞になると、雑誌の発売前に自分のところで書いてしまうことがある。その記事にもたいてい「○○日、分かった」とあるのだが、それは雑誌の広告を事前に見て「分かった」のである。
長谷川も書いているように、メディア同士が相手の名前を出して引用したり批判することは、メディア全体の信用を高めることになる。そうした意味では、原発事故後の放射能の危険性について「週刊現代」「週刊文春」と「週刊新潮」「週刊ポスト」が立場を変えて報じたり、このところの年金受給時期について論争したりするのはいいことである。