都会で濃縮される放射性物質―首都圏に広がる「新たなホットスポット」

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   福島原発から大きく離れている離れている首都圏に放射能汚染の大きな落とし穴があった。都市特有の「濃縮」が起こっているのだ。場所によっては、避難の目安とされる毎時3・8マイクロシーベルトを超える「新たなホットスポット」も見つかっている。都市濃縮が起こるメカニズム、対処法を探った。

アスファルト道路、人工河川に乗って集中化

   茨城県守谷市の公園で最近、1キログラム当たり2万6000ベクレルと国の基準値の6倍以上に相当する放射線量が検出された。現地調査をした東京大学の小豆川勝見助教は、「守谷市は福島原発から百数十キロ離れている。それなのにこれだけの線量が検出された原因が分からない」と話す。

   キャスターの国谷裕子は「都市の構造そのものが放射性汚染物質を濃縮する仕組みとなっているようです」と語り、守谷市の都市化の歩みを紹介した。1980年代から都市化に向けた大規模造成工事が行われ、人工河川が作られ、街中がアスファルトの道路で覆われた。

   小豆川助教「その結果、アスファルトの道路は水はけが良く、放射性物質が移動しやすい。それが人工河川から公園に流れ込み、高濃度になったと思われます」

   森口祐一・東京大学大学院教授も「街全体の排水性を高めたことが放射性物質を濃縮する結果になったと考えられます」と解説する。都市化が進んでいる街ほど福島原発から飛んできた放射性物質が凝縮されやすいというわけだ。

高温高効率のゴミ焼却施設でさらに濃縮

   千葉県・柏市のゴミ焼却場では作業員が防護服とマスクで身を固める。柏市はゴミを100分の1に減らせる最新の焼却施設を造ったが、焼却後の灰から7万ベクレルという高い放射線量が検出された。

   国谷「高温で燃やせば燃やすほど放射性物質の濃度は高まっていきます」

   焼却灰の一部はすでに全国各地の埋め立て処分場に運ばれていた。柏市は国や東京電力にドラム缶数百本分の焼却灰の保管場所を確保するよう要請している。同じ千葉県の流山市はこれまで焼却灰の処分を秋田県に委託していたが、都市凝縮の深刻さに気付いた秋田県の自治体は、これまで運ばれてきた300トン近い焼却灰の返却を指示した。返却された焼却灰の処分をどうするか。流山市に解決策はない。焼却灰が溜まり続ければ、ゴミ処理がストップする心配が強まっている。

   国谷「国の指示ではコンクリートで固めて処分となっていますが、そのコンクリートをどこで保管するのか。先が見えない状態です」

   森口「柏市では、セシウムなどの放射性物質が付着していると思われる草木や落ち葉などを分別・保管しているようですが、量が多くなれば自然発火の危険性もある。かといって、焼却灰を水に流せば河川や海が汚染される可能性が高い。私たちの生活環境をどう守るのか。時間のかかる作業ですが、行政と市民が一体となって考えていく必要があります」

   その具体的な解決策を提案するのが専門家の役割のはずだが、「行政と市民で考える必要」と言われてしまっては、やっぱり解決策はなく、都市は汚染が拡大するのかという不安を煽っただけである。

ナオジン

NHKクローズアップ現代(2011年12月12日放送「知られざる『都市濃縮』」)

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