恐ろしい時代が始まりそうだと戦々恐々としている。とにかくないのだ。ナイナイナイのナイづくし。いったい何がナイのか。お金です。知人のプロデューサーが予算がナイとぐちっていた。聞いてみると、これまで深夜の30分番組1本分にちょっと毛が生えたぐらいの金額で2時間の番組を制作しないといけないらしい。ちなみに高級外車1台分ぐらいの額。これで製作費の全てを賄うのですが、スタッフだけで100人近く。お金が出ていく度に細かくチェックしていかないと、後で誰かが会社を辞めるハメにもなりかねない。そんな事態を避けるべく、いろいろと工面する。
メイクやスタイリストも自前
地方ロケとスタジオ展開で構成される番組打ち合わせでの一こま。「追撮(追加の撮影)しなきゃなんないんだけど」とディレクターが聞くと、「それじゃぁ、ご自分で運転してカメラも回して下さい」とプロデューサーが言う。この会社は技術スタッフも抱えているが、予算が少ない番組には出さないという。「それだったら資料映像にします。でも使用料が2万円だけどいいですか」とディレクター。プロデューサーは「2万円!!ふざけないで!何か別の方法を考えてよ」と取り付く島がない。
まるでお小遣いをせびる小学生のような会話が切ない。カメラ技術経費を削るため、ロケではデジタルカメラ、スタジオでは昔ながらの大きなプロユースのカメラを使っている。でも、近ごろはスタジオ収録さえデジカメで行う番組が増えてきているらしい。
予算削減のしわ寄せが来るのは出演者も同じ。予算縮小でギャラ単価が低くなっています。有名な女優さんやタレントさんになると、出演者側がメイクさんやスタイリストさんを準備することもある。ところが、制作側が支払うのはかつての半分ほどの値段。事務所が人件費を負担しているわけだが、次のオファーが来なくなることを心配して、赤字覚悟で番組出演を引き受けなくてはならない。全てのケースに当てはまらないが、実は意外な人物がこのような状況でテレビに出ていることがあったりする。誰とは決して言えませんが…。
もっと悲惨な映画監督。作品ヒットしても儲かるのは配給会社
「でもテレビはまだいいよね~。もっと悲惨なのは映画よ」とある女優さんは話す。よくテレビドラマで車中シーンがあるが、監督の自家用車が使われることもあるとか。それでもテレビドラマの監督はまだお金があるほうで、映画監督は車を買う余裕すらないからかわいそうだと嘆いていた。映画監督とは職業ではなく、人種のようなものとある映画監督が話していた。映画監督は仕事というカテゴライズにも入らないほど、金銭が入ってこない。撮った映画が公開されれば単なる失業者。だから職業でくくってはいけない。あれは映画が大好きという人種なのさという話だった。いくら映画が大ヒットしても、監督の給料には反映されないという。公開初日に「大ヒット御礼」なんてCMをよく目にするけど、儲かるのは配給会社だけらしい。
本当にどこもかしこもお金がない。もちろん我が身も同じことで、もう値下げはしないと断言した居酒屋チェーン店じゃないですが、いつかこの値段でしかできません!と業界全体が宣言することはないのだろうか。
モジョっこ