イスラム寄りに舵切ったトルコ―アラブの春で周辺国と関係見直し

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   中東の歴史的転換点となったアラブの春が始まって1年が過ぎようとしている。キャスターの国谷裕子が「どこへ行く中東」と題し、中東3か国を訪れ、今後のカギを握るキーパーソンにインタビューする3回シリーズ、最後はトルコを取り上げた。

   孤立を深めるイスラエル、独裁政権維持のため弾圧が激しさを増す隣国シリア、影響力が低下するアメリカと、激しいうねりの中で「モダン・イスラムの希望の星」と頼りにされ、中東地域の要として存在感が増すトルコ。多元外交を進めてきたが、ここにきてその見直しを迫られている。近隣諸国とともに経済制裁に踏み切ったシリアとの関係など、今後どのような行動を取ろうとしているのか。

経済成長率8%「中東の希望の星」

   今年9月(2011年)、エジプトのカイロの空港はトルコのタイイップ・エルドラン首相を出迎える大勢の人々で埋まった。アラブの春を迎えた中東諸国を誰よりも早く訪れて民主化を支持し、先々で映画スター並みの歓迎を受けた。

   8%の経済成長率を実現した好調な経済に加え、堂々と欧米に物をいうトルコに対し、民主化を進め、政治と宗教のあり方を模索する中東諸国の人々は熱いまなざしを送る。トルコ躍進の秘密を学ぼうと、中東10か国以上から若者が研修に訪れている。道筋をつけたのが2002年の政権交代で与党となった公正発展党(AKP)。90年近い同国の歴史で、初めて単独での政権運営を任された。

   好調な経済は10年の経済成長率が8%を超え、GDP(国内総生産)も政権獲得以来3倍に増えて新興国の仲間入りを果たした。

   外交もNATO加盟・EU加盟申請と欧米中心だったが、イスラム諸国とのつながり重視に切り替えた。シリアやレバノンなどとは関税を撤廃し、EUのような自由貿易圏の創設に向け動き出している。

   さらに、イスラム諸国に限らず近隣諸国との懸案を一つひとつ解決する「ゼロプロブレム外交」を展開。国境を接する国々との間で抱えてきた課題について、積極的な対話外交を展開して、ロシア、イラン、セルビアなど10か国以上と協力関係を構築している。

   エルドアン首相は「中東の国すべてが一体となれば多くの難題を一緒に乗り越えられると信じている」と述べている。しかし、なかなか思い通りにはいかない。これまで友好関係を築き、首相自身が家族ぐるみの付き合いもしてきた隣国シリアだが、弾圧を逃れてトルコへ避難民が続々を流入してきている。それでも殺戮をやめないシリアのアサド政権とは同床異夢と悟ったのだろう。エルドアン首相は友好関係を白紙に戻す決断をし、11月22日に次のような演説を行った。

「アサド大統領に告ぐ。シリアと周辺地域の安定のために、これ以上の迫害をやめ政権の座から退くべきだ」

   近隣アラブ諸国とともに経済制裁にも踏み切った。

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