1本の映画が社会現象になっていると「スッキリ!」が取り上げた。タイトルはエンディングノート。10月1日(2011年)に12館で公開されると、口コミで評判が広がり、来年1月には100館で上映されることが決まった。
定年退職2年後に末期がん告知。葬儀場も自分で下見
主人公はごく普通のサラリーマンの男性で、退職2年後に末期の胃がんが見つかり、亡くなるまでの半年間を娘が撮影したドキュメンタリー映画だ。といって、闘病生活を記録したものではない。突然やってきた死に、「家族が困るだろう。キチンとデッサンしておかないと」と、父が行う死への段取りを淡々と描いていく。
化学メーカーの営業職だった砂田智昭に定期健診でがんが見つかったのは、定年退職した2年後の09年5月。手術不可能な末期がんだった。死を覚悟したのだろう、死へ向かう準備として今やれる事をリストアップした「エンディングノート」というマニュアル作りを始めた。とくに、妻・淳子へ負担をかけたくないと、葬儀場を自ら下見、葬式の段取りも決める。一家は妻と1男2女の4人。小さい時から撮影するのが好きで、フリーの監督助手をしている次女の麻美がそんな父の姿を撮影していった。
「小さい時から、その状況が幸せな姿であればあるほど、いつかはなくなってしまうという気持ちが強かった。今回も病気が分かり、そんなに長くないと分かったので、この瞬間を留めて置きたいという気持ちが強かった」
家族との最後の旅行には、順番が逆になって辛い思いをさせる94歳の母も連れて行った。そして年の瀬の09年12月、アメリカに住む長男の娘たち2人が会いにきてくれた。その翌日に容態が急変し、家に帰ることはなく5日後、69歳で亡くなった。最後に41年連れ添った妻に「さよなら」を告げると、妻も「一緒に行きたい」と…。
幸せな死…なかなか難しい
スタジオでは、司会の加藤浩次が「リアルとはこういうことなんだと思ってグッときましたね」と話す。キャスターのテリー伊藤は「見ていて幸せだなと思いましたね。こんな良い条件で亡くなる方は実はいないですよ。孤独で、一人で亡くなる方がたくさんいる。これは相当に上級ですよ」とため息をつく。
大ヒットした背景には、死を間近に見た東日本大震災の影響があるのだろう。家族との絆を思って死に向かったこの男性に憧れるのかもしれない。
「もしもの時に役立つノート」というエンディングノートも売れているという。昨年発売され年間4万冊の目標が、この映画がきっかけで15万冊とヒット。エンディングノートセミナーも開かれているという。