宮城、岩手の津波被災地で、復旧あるいは新規に建設する堤防の高さをどうするかが論争になりそうだ。高くすればむろん安全だが、海が見えなくなる。コンクリートに囲まれて住むことに耐えられるか。
気仙沼「壁に囲まれまるで刑務所」
宮城県は整備する堤防の高さについての方針を出した。気仙沼では湾 内最奥の一帯には6.2メートル、その前面が5.0メートル。 さらに外が7.2メートルとなっている。明治三陸津波などから割り出されたものだという。
気仙沼はもともと細く切れ込んだ湾にへばりついた町だ。水がひたひたと岸壁に迫り、目障りな防波堤はどこにも見えなかった。いま県のいう防波堤を実景に当てはめてみると、岸壁も砂浜もコンクリートの壁が立ちはだかって、海が全く見えなくなる。沖の船からは町自体がコンクリート壁の奥に隠れる。
「海を見ながら生活していたのが、壁を見ながらでは精神的にもおかしくなる」「商店街にとっては、堤防が命取りになりはしないか」「海の見えない気仙沼は魅力ないですよ」ということになる。
気仙沼の大島は3月に12メートルの津波が襲った。今回の方針では、大島の突端部は11.8メートルから7メートルの堤防がぐるりと取り巻く。映像シミュレーションしてみると、まるで刑務所の塀だ。これが砂浜に立ったのではたまらない。
「反対です」「海岸線が観光地として使いものにならなくなる。漁業と観光で生きてますからね」「10メートルのものができたら、目の前が真っ暗」
文
ヤンヤン| 似顔絵 池田マコト