読売新聞記者が気にする「同僚はナベツネどう思っているのか」
ところで、オーストラリアの新聞社で働いている知人からメールが来て、読売新聞社の中にある本屋へ「週刊現代」を買いに行ったのだが、売り切れていたという。「週刊ポスト」を買って仕方なくコンビニまで行って手に入れたそうだ。
今週の両誌では、ポストの「巨魁・渡辺恒雄への『引退勧告』」をはじめ、上杉隆の「『会長兼主筆』という大矛盾」、佐野眞一の「正力、務台、渡辺『読売天皇三代記』」をおもしろく読んだが、現代の記事に興味をひくものはなかったのだが。
もう1度手にとって表紙を見てみる。左端に「『読売王国』クーデター全内幕」とあり、その中に「何が怖いの? 読売新聞記者たちに聞いてみた」とある。なるほど自分のところの同僚記者がナベツネのことを何といっているのか「心配」で買いにきたのではないだろうか。
内容はさしたることはない。ナベツネが「オレは最後の独裁者」だと公言しているとか、記憶力も判断力も衰えてきてはいるが、社内では「陰口でさえ、怖くて言えない」といった他愛のない話である。「読売新聞記者に聞く」も、現役社員からは「表立って清武さんを応援する記者はいません」「若手には『ナベツネ批判』のような意見はないですよ。むしろ清武さんの行動の真意をいぶかる声が圧倒的」「会長に対する求心力の低下とか、社内の動揺もまったくないですよ」という声ばかり。
ノンフィクション・ライターの魚住昭が現代の連載「ジャーナリストの目」で、読売新聞の社主・正力松太郎が新聞を私物化していることを批判して読売を辞めた社会部記者・本田靖春に触れて、今回の清武騒動を書いている。生前、本田は読売についてこう話していた。
「正力さんは天才事業家だけど、新聞をチラシ広告と同じぐらいにしか考えていなかった。務台さんも『販売の神様』であってジャーナリストじゃない。渡辺さんもジャーナリストというより政界の人ですよね。だから読売でジャーナリストであろうとすると必ず上とぶつかることになる」
同じ社会部の敏腕記者だった清武には、「前途は多難だろうが、初心を貫いて独裁体制に風穴を開けてほしい。本田さんも天国からエールを送っているはずだから」と激励している。
読売の記者たちは、こっちをこそ読むべきである。