最後の講座でがんをネタにこんな小咄
その師匠の最後の高座となったのは気管切開する直前の3月6日。自分の病気をネタにこんな小咄だった。
「聞こえる? 後ろの方? いゃ~、今回 医者のミスなんだよね。医者の言うのには、早期の子宮がんだって言いやがんの。ペニシリンで治るっていうからね…」
その後の闘病生活はすさまじいものがあったという。ダンディーだった師匠の無様な姿を見せたくないとの家族の思いがあったようで、弟子たちも会えなかったらしい。弟子たちが最後の会ったのは今年8月。見舞いに行くと、筆談で弟子全員を一言で笑わせる言葉を書いて「どうだ!」だった。
司会の小倉智昭「言葉はきついけど、ほんとに江戸っ子。優しかったですよね」
「戒名はオレが作っているから」と遺言で言い残した。それが「立川雲黒斉家元勝手居士」。最後まで笑いを取るのを忘れない名人だった。
文
モンブラン| 似顔絵 池田マコト