ハッカー被害いまや全世界で30億件80兆円―謎の集団「アノニマス」

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   格差是正を叫びウォール街をデモをする若者の中に、ハッカー集団「アノニマス」を名乗る不気味な仮面の男たちが現れた。彼らはニューヨーク証券取引所やSONYを公然と攻撃している。ハッカー攻撃はいま全世界で30億件にのぼる。企業活動の妨害や機密の盗み出しで被害は80兆円を超えるともいう。しかし全容は不明だ。「アノニマス」は米、欧、中国などに数千人ともいわれるが、実態はわからない。

   実際にその攻撃を受けた人物がいた。2月(2011年)までセキュリティー会社のCEOだった。アノニマスに潜入を試みて気づかれ、逆に攻撃を受けて幹部のEメールを公表され、画面上で「お前の負け」と決めつけられた。彼は責任を問われ職を追われた。「私のようなプロでも太刀打ちできない」

「世界を変えるには違法もやむを得ない」

   アノニマスに共鳴するグレッグ・ハウシュさん(32)はボストン郊外に住み、ウェブデザインの仕事をしている。違法行為はしていないので顔は隠さない。「彼らとの交流で人生が変わった。退屈だった日々が、いまは楽しくて仕方がない。世の中を変えられるとわかったからだ」という。メンバーと連携して、特殊なツールで標的に大量のデー タを送り込む。「ロックオンしてレザーボタンを押すだけ。最高だ!」

   この春、SONYは、ゲームの海賊版の横行に対抗して機能の一部を制限した。これにアノニマスが「機能をもとに戻せ」と要求。グループ各社のパソコンに侵入してユーザーの個人情報1億件を盗み出した。SONYは業務停止に追い込まれ、140億円の損害を出した。SONYは今も攻撃を恐れてコメントを拒む。

   ハウシュさんは「目には目を、だ。世界を変えるには違法もやむを得ない。アノニマスは正義だと信じている」という。

   ハッカー事情に詳しい名古屋大の高倉弘喜教授は、「欧米では技術やソフトはメーカーとユーザーが一緒に作る感覚。日本のメーカーは自分で作ったものに手を加えられたくない。この違いだろう。アノニマスでも、優秀な技術者は一握りだが、裾野のハッカーの暴走をコントロールできなくなっている」という。

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