おととい15日(2011年11月)に平壌で行われたサッカーW杯アジア3次予選は、「究極のアウェー戦」として異常な状態のもとで行われた。日本代表は0対1で敗れたが、会場となった金日成スタジアムの雰囲気はどうだったのか。テレビ朝日外報部の李志善記者がその様子を伝えた。
人文字3日前から練習、スタジアム周辺にはダフ屋出没
李記者は日本のサポーターと北朝鮮サポーターのちょうど境目あたりで取材していて、緊張を感じた瞬間が何回かあったという。5万人の大観衆の中で軍関係者に取り囲まれるように陣取った150人の日本人サポーター。大きな声をあげようとすると、北朝鮮のサポーターは持っていたメガホンや太鼓を叩く棒で日本人サポーターを制するように差す。君が代の演奏の時も、演奏が始まった一瞬は静かになったが、それが君が代とわかると大ブーイングでかき消された。後半10分過ぎのファウルプレーの時もスタジアムから飛び出さんばかりの勢いだった―と報告する。
北朝鮮サポーターの中に帽子をかぶり赤いネクタイをした集団が目立ったが、動員された大学生だという。若くてパワーがあり、応援に力を入れるが、比較的冷静に対応できる教養のあるエリートが選ばれたとみる。「朝鮮 勝て」という人文字は3日前から練習していた。女性たちの服装がこれまでは1色だったが、今回は赤、黄色、紫などのコートもみられ、おしゃれになっている印象を受けたという。
司会の羽鳥慎一「動員ということですが、サポーターたちはチケットを買っていたのですか」
李「試合前に会場の周辺に大行列があり、どこどこの所属というプラカードを持っていました。大部分は組織的な動員だったということを物語っています。
一方で、一部にはダフ屋もいて、チケットには100ウオンと書いてあるのですが、1000ウオンぐらいに高騰。北朝鮮の月収は2000ウオンから3000ウオンなので、月収の半分くらい。プラチナ状態ですね」
国内の扱い小さく、W杯敗退も報じられず
李は試合翌日の労働新聞を持ってきたが、試合の結果は1面には載っていなかった。裏の面、日本の新聞でいえばテレビ欄のところに、3段囲み相当の記事が掲載されていた。特別目立つ扱いではない。見出しは「わがチームが日本チームに1対0で勝った」とあっさりしたもの。W杯に進出できなくなったことには一切触れていない。
コメンテーターの立花胡桃(作家)「(スタジアムの盛り上がりからすると)意外にちっちゃいですね」
北朝鮮も今回の試合の意味は十分わかっていたのだろう。