足元見られた野田首相―オバマに脅され、TPP会議は出席拒否

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   野田首相が出席したホノルルでのAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の首脳会議。「TPP交渉参加に向けて関係9か国と協議に入る」と臨んだ首相だったが、出だしから激しいパンチを浴びた。

   出鼻をくじかれたのは、APECと並行して行われたTPP交渉参加国首脳会議への出席拒否。日米首脳会談ではオバマ米大統領から、「農業問題は厳しいだろうが、交渉を遅らせることはない。われわれの目標は来年中に合意することだ」とクギを刺される始末だ。

ウルグアイ・ラウンドでは会食と泣き落とし

   司会の小倉智昭は「わかりやすく言えば、(交渉参加を)断られたんだろうね」と話す。そこまでいかなくても、足元を見透かされていることはたしか。

   さらに、首脳会談の内容について、米側は「野田首相が『すべての物品・サービスを貿易自由化交渉のテーブルに乗せる』と表明した」と発表した。これには日本側も即座に否定したが、単純な事実誤認というより、「参加したいなら例外は認めないゾ!」という『脅し』にもとれる。

   元農水官僚の山下一仁は「今の関税率を維持したいというポジションにこだわれば、相当厳しい交渉になる。例外を実現したとしても、相当な代償を払う必要がある」と厳しい見通しを話す。山下はコメ市場開放を阻止した1993年のウルグアイ・ラウンドの時の交渉担当者だった。この時、成功したのは裏側で会食などで味方をつくり、最後は泣き落とし戦術だったという。山下は「守るべきものをしっかり決めておけば、交渉はできるかもしれない。例外品目にこだわれば何も勝ち取れない」とも言う。

取捨選択の詰め甘い日本―守るべきは国民の暮らしは何なのか

   夏野剛(慶応大大学院特別招聘教授)は次のように言う。

「守るべきものは何なのかという議論を、根本からしなければいけない時期に来ているのだと思う。コメも大事かもしれないが、他にも大事なものがある。これでは交渉中に取捨選択しなければならない。
そのとき司令塔は誰で、実際の交渉は誰がやるのか。交渉する人はお気の毒で、困ったことに、交渉の最中によくハシゴを外される」

   元ユニクロ社員の田中雅子(経営コンサルタント)は、「国民から見ていると、守るべきもの、勝ち取るものが本当に国益を考えているものなのか、政治家の(選挙)基盤を守るものなのか正直分からないところがある」と厳しく指摘する。

   戦略を持たずに、その場の戦術だけで交渉に臨む日本。泣き落としが何度も効くとは思えない。

文   モンブラン| 似顔絵 池田マコト
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