<1年前のワイドショー通信簿>昨年(2010年)の11月16日、裁判員裁判としては初めての死刑判決が横浜地裁で下された。新宿・歌舞伎町でマージャン店営業者ら2人を生きたまま電動のこぎりで切断・殺害した32歳の男だ。判決文では「あまりにも残酷で、極刑回避の情状は見出せない」としたが、裁判長が「控訴」をすすめる異例の判決となった。
裁判長の「控訴のすすめ」について、ワイドショーはどう見たか。TBS系「朝ズバッ!」は東京地検もと特捜部長の若狭勝・弁護士がこう語った。
「2つの意味があると思う。一つは裁判員の心の負担の軽減。これまで裁判官がやってきた死刑判決の際にも、同じように控訴を勧めるケースはあった。裁判官 でさえ死刑が確定することに躊躇する。いわんや市民の裁判員は非常に重荷になり、高裁で確定したことにすれば少しは負担が軽くなる。
もう一つは、違う目でもう1度、慎重な判断を求めてもらおうという考え。この2つで控訴を勧めたと思う」
日本テレビ系「スッキリ!!」は「裁判員の間で評議が割れたのではないか」という元東京高裁判事の見方を紹介しながら、コメンテーターのロバート・キャンベル東大教授がこんな疑問を口にした。
「アメリカと違い、日本の上級審に裁判員はおらず、職業裁判官が裁く。裁判長がこの判決は完全ではないというとなると、いままでの裁判、裁判員の判断はなんだったのか」
こうした議論はワイドショーとしては苦手なのか、その後は死刑判決はほとんど話題として取り上げていない。これまでに裁判員裁判で死刑判決は10例となっている。(テレビウォッチ編集部)