まず交渉。言うこと言ってダメならダメという手はないか
日本国内はどうか。経団連など輸出産業は当然推進派だ。しかし、自由化では痛い目を見ている農業は猛反対。他に、アメリカ式医療の浸透を警戒する医師会、薬剤師会が反対と、はっきりしているのはこれくらいで、幅広い分野ごとにどんな影響があるのかはほとんどわからない。識者の見解も分かれる。
話をややこしくしているのが国会議員で、冷静な分析をするどころか、農家の票が欲しいばかりに農協の音頭に乗って走り回る。まるで交渉に入ったら終わりといわんばかり。
国谷弘子キャスターが中継で2人の民主党国会議員に聞いた。推進派の近藤洋介氏と慎重派の篠原孝氏。
近藤「菅政権から1年かけて議論してきた。ただ、交渉に参加していないので情報が少なかった。説明不足は否めない。しかし、経済の再生と国内問題が両立する策はあると思う。農業の現状はTPPと関係なく思い切った対策が必要になる」
篠原「アメリカにいわれてというのはダメ。日本のルールと折り合いがつかないと。また、アジアでは中国と並行しないといけない。国内にどういう影響があるかも検討されていない。準備不足。今回は様子を見た方がいい」
そんな中、農水省までが「生産は9割減」「食料自給率は13%」などと怪しげな試算を出す。地方でも「産業が縮小」「雇用が減る」など最悪の数字をはじき出している。危機感はわかるが、困ったことだ。
交渉はあくまで交渉ではないか。まず参加する。言うことを言う。相手の言うことも聞く。ダメならダメ。それが民主主義のルールだ。それよりも、日本の農業を補助金漬けでこんなにしてしまったのは誰なんだ。その方がはるかに重要だ。どうせすぐにまとまる話ではない。時間はある。
ヤンヤン
*NHKクローズアップ現代(2011年11月10日放送「TPP交渉参加の行方」)