来春の雪解け水に高セシウム懸念「山の汚染」1万ベクレル以上―福島

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   原発事故以来、専門家の予想は総じて悪いほうに外れたように思われるが、コメの収穫、セシウム米については、懸念されたパニック的な事態には至らなかったようだ。思い出してみれば、夏場には古米を買い占める動きなども伝えられていた。

山間の水田に流れ込み

   今回のスタジオゲストで、土壌環境学が専門で福島の現状にも詳しいという野中昌法・新潟大学農学部教授は、「土壌の汚染がかなり高い地域でも、稲作ではセシウムはほとんど検出されなかった」と言う。

   なんでも、稲やコメが土壌から放射能を取り込む移行の度合いは、当初の予想より非常に低かったという。コメについては、予想がいいほうに外れてくれたようだ。

   さらに番組では、現在、基準値以下の放射能をより一層減らそうと、福島県の農家がセシウム吸着剤で実験を行うなどし、放射能との戦いに積極的に取り組んでいる様子が紹介された。

   人類が創意工夫によって放射能に打ち勝つ明るい未来――を予感させたが、番組はそのままでは終わらなかった。一段落したところで、国谷裕子キャスターが話題転換。農業に「またあらたな懸念」が持ち上がっていることを知らせる。一気に暗雲垂れ込めた。

   それは、セシウムが山から水に含まれて、水田などに入り込むという問題だ。福島で行われたコメの予備調査で、1kgあたり約500ベクレルという高い値が検出された場所があった。そこは山間の水田で、山からの水を農業用水として利用していたが、その水にセシウムが多く入っていた可能性が高いという。また、山の周辺で森林の水を使う水田では、他より比較的高い放射能が出る傾向があるそうだ。

木々の葉に付着して地中に

   なぜ山からの水は放射能が高いのか。原発事故で、山の木々の葉にセシウムが付着。その葉が落葉し、地面にたまる。雨が降り、水が、落ち葉の腐食層のセシウムを含んで、地下水となり、野を下っていくという仕組みだという。とある調査では、山の汚染は予想以上だったそうだ。調査した10か所以上のポイントで1万ベクレル以上の高い値となったという。

   ナレーションは「来春には、雪解け水によってさらに多くの放射性物質が流れ出すことが予想されます」と重々しく告げた。冬来たりなば、「セシウムの春」が待っている。

ボンド柳生

NHKクローズアップ現代(2011年11月8日放送「放射性物質を減らせ~福島・限界に挑む農家たち~」)

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