TPP(環太平洋経済連携協定)に参加しても食の安全は守られるのか。笠井信輔アナがこの不安に迫った。取り上げたのは遺伝子組み換えの表示。政府は国内外の大豆、とうものこしなど農作物7品目と豆腐、納豆、みそなど加工食品32品目について遺伝子組み換え表示を義務付けている。原料に遺伝子組み換えを全面的に使用したり、一部使用については表示を義務付け、使用していない場合は任意で表示しなくてもよいことになっている。
ややこしいのは任意の表示。現状は消費者が気にするのでメーカーが任意で「遺伝子組み換えは使用していない」と表示しているケースがほとんど。TPPに参加すれば、米国から遺伝子組み換えにこだわらず、表示はなしにしようと要求してくるに違いないと見られている。
「負担大きいから組み換え表示止めよう」
米国が要求を押しつけてくると見られているのは、こんなことがあったからだ。今年2月(2011年)、日本が農薬成分(439項目)をチェックして輸入していることに対し、「あまりにも負担が重すぎる。米国も安全な農薬を使用しているので自由にしよう」と要求してきた。遺伝子組み換えでも表示をしていない米国は当然、要求してくるというわけだ。
食の安全に携わってきた「食政策センタービジョン21」の安田節子代表は次のような例を指摘した。
「アメリカが認めている赤色40号という添加物を日本は認めていなかった。しかし、日本が認めないとアメリカが輸出できないので日本が認めた経緯があった」
野田首相10日に決定。集中審議は翌日という姑息
ただ、番組の流れはTPP交渉に参加しても、米国の言いなりにならず拒否もあり得るという方向に流れた。その例として挙げたのが2002年のAPECの貿易大臣会合。米国はEUの厳しい遺伝子組み換え表示規制を止めるように迫ったが、日本、オーストラリア、ニュージーランドが連携して要求を退けた。だから、遺伝子組み換えでも米国の言いなりになるわけではないというわけだ。
TPP参加に賛成の司会の小倉智昭は「アメリカでも、日本よりもっと厳しい基準があったりするものもあるんですよね」という。
竹田圭吾(Newsweek日本語版編集主幹)「表示は自分たちの国で決めればいいと思うが、TPP交渉参加はしてもいい」
野田首相は10日(2011年11月)に政府の意向を決定するというが、衆参両院で「TPP集中審議」が予定されているのは方針決定の翌11日。何のための集中審議か分からない。普天間基地問題で負い目があるなど、端からTPP参加の意向なのではなかろうか。