「暴排条例」知ったことか!弘道会と愛知県警のドラマより凄い癒着
安藤隆春前警察庁長官が「弘道会の弱体化なくして山口組の弱体化はなく、山口組の弱体化なくして暴力団の弱体化はない」といわしめた弘道会の資金源と疑われる「風俗王」が、清原、山本譲二、吉幾三などの芸能人と親しいだけではなく、捜査員をカネで籠絡していたと告発する文春のノンフィクション・ライター藤吉雅春の力作は読みごたえがある。この人物、今年4月に弘道会若頭・竹内照明被告とともに詐欺容疑で逮捕された佐藤義徳被告(54)である。
暴力団と警察の癒着は小説、ドラマなどでよく描かれるが、事実は小説より奇なり。藤吉によれば、佐藤は竹内若頭たちがいつでも利用できるような病院を確保しておくために、大病院の御曹司を有名芸能人に会わせるなどして手なずけ、おまけに愛知県蟹江署から感謝状を贈呈させる工作までした疑いがあるという。
警察にマークされている佐藤がそんなことをできるのは、警察との強い癒着が背景にあるからだ。「『名古屋は治外法権』(風俗関係者)と言われるほどの、腐りきった土壌があった」とまで書いている。
07年10月に佐藤の自宅に愛知県警の家宅捜査が入ったとき、捜査四課の警部の名前が記された850万円の借用書が発見された。株取引で800万円の損を出した警察署長は佐藤から2000万円を提供され、受け取るところを盗聴されたという話まである。佐藤は日ごろ周囲に「俺は警察にカネを払っているから道の真ん中を堂々と歩けるんだ」と豪語していたという。地元在住のジャーナリスト成田俊一はこう語っている。
「昔から、どこの警察でも一人や二人の汚れ役は必要とされていた。ヤクザから情報を取るためです。しかし、愛知県警は幹部クラスまでカネ、女、モノで買収されていた。県警と弘道会のつなぎ役として浮上していたのが、佐藤だったのです」
さらに驚くのは、蟹江市の副署長が先の病院の御曹司に感謝状を出していたことで、愛知県庁の監査と県警が極秘に調査していて、佐藤と副署長との接点は春日井カントリークラブでのゴルフだと判明したが、県警の幹部クラスに春日井カントリークラブに行かないようにという注意が回っただけで、蟹江署の署長は処分なしで定年退職、副署長は科捜研へ異動になっただけだった。
「県警は佐藤に浸食されていた『恥部』に蓋をしたのだ」と批判し、「警察の健全化なくして、暴力団の健全化はない」と結ぶ。
大阪特捜部の腐敗が明るみに出たが、愛知県警の腐敗はもっとひどいようだ。地元の中日新聞はこうしたことをどう報道しているのか、調べてみたい。読み捨てにできない2本である。