米国内でスパイ活動を行っていた「美しすぎる女スパイ」なる者がいっときちょっとした話題になったが、さきごろFBIは、そのロシア人女性アンナ・チャップマンの活躍のほどを、映像で公開した。
色仕掛けもサスペンスもなし
FBIのおとり捜査官と(おそらくはそうとは知らずに)カフェで会ったとき、彼女はスパイらしくサングラスをかけてはいたが、Tシャツにジーンズ姿で、全体にカジュアルな雰囲気をかもしていた。
また、デパートでは無線機器を使って、近くのロシア当局と連絡を取ったりもしていたが、それらは、ありがちなスパイのステレオタイプ――変幻自在、三面六臂、神秘的なスパイとは違った、地味な映像であった。
これは、テレビ絵として「おもしろい」「おもしろくない」の二元的な価値基準を持つ番組コメンテイターのテリー伊藤にとっては、許しがたかったようだ。
「浮気調査みたいな、けっこう間抜けな映像」「スパイ小説だと、美人スパイが色じかけで、とかある。そういうほうが、おもしろかった。ああいうとこで打ち合わせしてんじゃ、つまんない」などとこきおろし、美しすぎるスパイは「たいしたスパイじゃなかったんじゃない」と片付けていた。
美人すぎるスパイはつまらなすぎたスパイだったようだ。
文
ボンド柳生| 似顔絵 池田マコト