「福島のコメ」安全宣言受けても倉庫に新米山積み

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   まもなく東日本大震災発生から8か月が経つが、原発事故による風評被害は今も続いている。なかでも大きな打撃を受けているのが福島産のコメだ。福島は新潟、秋田に次ぐ日本有数のコメの産地。原発事故後、福島県は県内の田んぼや畑で作られた米や農作物の放射性物質の汚染検査を実施。1700か所以上に及ぶ放射能検査を終えて「安全宣言」を出した。

   しかし、県内のコメ仲買業者の倉庫には、売り先の決まらない新米が次々と運び込まれ、山積みにされている。安全だとされた福島産のコメがなぜ売れないのか。産地と生産者の現状を追った。

「店頭に並べても売れない」と取引停止や大幅値引き要求

   キャスターの国谷裕子はこう報告する。

「安全だとされたおコメが消費者に受け入れられない状況が続いています。むしろ、大震災以前に生産された昨年産の古米が飛ぶように売れて、新米は売れていません。福島の米作農家は米を作らないと水田が荒れると、迷いながらも今年も作付けをしました。作っても売れない現実にどう向き合えばいいのかを考えて見ました」

   都内のスーパーの担当者は「毎年8トン前後の福島産を仕入れていましたが、原発事故以来、店頭に並べても売れないので、今年は仕入れを見合わせています」と話す。

   福島の大手仲買業者の飯島成一さんの会社では、県内3000戸以上の農家から米を買い取り、全国の500以上の飲食店やスーパー、コンビニに卸していた。しかし、原発事故以降は、例年ならば収穫前に契約を交わしていた得意先のほとんどが、取引中止や契約キャンセルを通知してきた。飯島さんは全国を回って、なんとか関西の商社から「安全が確認できたら、例年通りに引き取る」という約束を取り付けたが、その直後に二本松市の水田で生産された米から基準値以上の1キログラム当たり500ベクレルの線量が検出され、商社は引き取りを断ってきた。他の取引先も、米相場の価格を下回る値段ならと値引きを要求してきている。飯島さんは「自分たちが福島産を見捨てたら福島のコメ作りはどうなる。苦しいけど戦うしかない」と苦悩を滲ませる。

打撃大きい産直販売農家

   ゲストの京都大学農学研究科の新山陽子教授は「1度失われた信頼を取り戻すことは大変なこと。阪神淡路大震災でも、震災から1か月以上経っても信頼を回復することは困難だった。今回の震災は原発事故まで起きている。今後の生産能力よりも、農家への精神的打撃の方が大きいと思うので心配です」と心配する。

   NHK福島支局の中川裕記者は「福島はコメの産直販売をしている農家も多い。今回の風評被害は身を切られるように辛いことで、これから先続けていけるのかどうか不安だと語っている人が多い」と伝えた。

   国谷「風評被害を防ぐ手立ては?」

   新山「まずは国からの情報提供。それも、誰でもがわかりやすい表現での提供です。たとえば、500ベクレルというのがどんなレベルなのか。国や自治体は『情報はネットなどで公表している』としていますが、みんながみんなネットにアクセスできるわけではない。情報の伝達手段ももっと多様にする必要があります」

   福島原発事故が収拾しない限り、福島産の食材への敬遠は何年も続くのだろう。原発安全宣言を振りまいてきた歴代内閣、東京電力、役所と学会は、まずは自分たちで率先して購入してはいかがか。

ナオジン

NHKクローズアップ現代(2011年10月31日放送「どうなる福島のコメ~安全宣言は出たものの~」)

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