歳出削減のPRが狙いなのだろう。藤田幸久財務副大臣ら財務省の公務員住宅削減の検討会メンバーは、10月31日(2011年)に都内の公務員宿舎を視察した。
すでに廃止が決まっている宿舎を見せて「検討」というのはまやかしに過ぎるが、これに同行したリポーターの平野早苗も「建て替えた方がいいとの印象を持たせるためにマスコミにも公開した」と感想を話す。ところが、銀座の「夜の蝶」から作家に転身したという蝶々が「この紹介の仕方は不公平」と異を唱えた。
財務省「古いオンボロ」公開して建て替えPR?
視察したのは4か所。「いろいろなタイプの公務員宿舎を視察していろんな角度から削減問題について現場を見て判断する」(藤田)のが狙いという。まず訪れたのは杉並区にある築39年の防衛省の単身者向け宿舎。6畳1間でトイレ、風呂、キッチンは共用、家賃は月1万3000円だが、すでに廃止が決まっているのだろう。人は住んでいないようだ。
次は、都心の高級住宅街にある築30年の広尾住宅。3LDKの幹部用の合同宿舎で、家賃は月6万5000円だったが、ここも廃止が決まっているという。さらに六本木の築27年の公務員宿舎。2DKで家賃は月2万1000円。ここは危機管理要員の宿舎にもなっており、該当する公務員の家賃は無料という。
視察で注目されたのが、東京湾岸エリアにある新築の東雲住宅。3LDKで家賃は月4万8000円。今年3月から入居が始まったばかりで、一部に東北大震災の被災者が仮住まいしており、その内部を見せてもらった。豪華というほどではないが、広いリビングに広いキッチン、ベランダに出ると東京湾が一望できる。不動産業者によると、付近の同じタイプのマンションの家賃は月21~23万円という。
「まじめに働いている方がほとんどなのに…」
公務員問題に詳しいジャーナリストの若林亜紀は手厳しく批判する。
「最後の東雲住宅を除いて、わざと古い物件を選んでいる印象。何年も前に廃止が決まっている物件を見せて、建て替えても仕方がないと思わせている」
視察に同行した平野も「古い物件を見て建て替えた方がいいという印象を持った。視察した物件はあった方がいいという意味合いを持たせるように選び、マスコミに公開したのだと思った」という。
これに意表をついて噛みついたのが蝶々。
「公務員の方も可哀想。真面目にきちんと働いている方がほとんどなのに、こういう紹介の仕方だとあまり公平な感じはしません。(これを見て)公務員はずるいと言ってしまいがちなので、配慮をしていただきたい」
ここで取り上げている公務員宿舎の是非は、民間との格差が大きい制度上の問題。公務員宿舎は何かあったらすぐに出勤できるように提供しているというが、公務員に緊急事態がそう頻繁とあるわけではない。都心に近い宿舎の利点は、銀座などで飲んですぐに帰宅できることの方が大きいのでは? 銀座の「夜の蝶」の経験があるなら、そこは分かっているはずだけれど…