国の「農地開発事業」1兆8000億円―残ったのは農家の借金と耕作放棄地だけ

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   政官のムダ追及に突き進む「朝ズバッ!」が、今度は国営農地開発事業に切り込んだ。旧農林省が食料自給率アップと農業の大規模化を目的に、1970年代から30年続けた農地造成だ。総事業費1兆8000億円。負担は国が70~80%、 都道府県が10~25%、市町村と農家が各3~5%で、03年までの30年間に全国171地区12万ヘクタール、沖縄本島とほぼ同じ面積の農地が造成された。

「5年のはずの造成が20年かかって…長男は転職」

   島根・奥出雲町の農家松崎寛さん(84)は、79歳の妻と2人で9ヘクタールの農地を守っている。34年前、50歳のときにこの事業に参加した。800万円を負担して2ヘクタールの土地を得るはずだった。ところが、「5年で済むはずの造成が20年かかった」。ために、後を継ぐはずだった長男は農学部まで出たが、農業では食っていけないと家を離れざるをえなかった。

   この地区では272ヘクタールが造成された。事業費は307億円。農家の負担は491戸で12億円。年に40万円の負担だ。しかしいま、75戸が負担金を払えない状況だという。松崎さんもまだ15年残っている。99歳まで払わないといけない。夜逃げした人、後継者がなくて荒れたままのところもある。土地は痩せていて、耕作放棄が全体の18%にもなるという。

   明治学院大の神門善久教授は「事業をやるという役所の論理で、実際に農業をやる人と環境を無視してしまったのが問題の根本」という。「工期が長引き、収益は上がらず、農家は負担金だけが残った」

文   ヤンヤン| 似顔絵 池田マコト
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