「放漫で暴虐で強情な未熟で我慢ならない男」
ただ、番組が取り上げたのは、情熱が実を結び、強い自信を得てからの話。恵まれない生立ち、資金もなく「諦めない強い情熱」と技術だけで起業に乗り出した青年期の「知られざる素顔」は分からない。新聞やウイドペキアなどによると、シリア人の政治学者と父親に結婚を反対されたアメリカ人の大学院生との間に生まれ、誕生以前から養子に出されることが決められていたという。彼が実母に再会するのは30歳を過ぎたからだ。
エンジニアとして「アタリ」に採用され、初めて定職についたジョブズは、長髪で風呂にも入らず、不潔な姿で社内を歩き回って他の社員から嫌われた。その後、自らアップル社を創業したが、途中で追放されてしまう。ジョブズがアップルの社長にスカウトしたジョン・スカリー(元ペプシコーラ事業担当社長)に追放されたのだが、そのスカリーのこんなジョブズ評がある。
「正に刺激的存在だ。放漫で、暴虐で、激しく、無い物ねだりの完全主義者だ。未成熟でか弱く、感じやすく、傷つきやすくもある。そして精力的で、構想力があり、カリスマ的でさらにおおむねは強情で、譲らず、まったく我慢のならない男だ」(ウイドペキア)
社会を変えられるのはそういう力なのだろう。その素顔は、日本でいえば織田信長が当てはまりそうだ。
*NHKクローズアップ現代(2011年10月12日放送「世界を変えた男 スティーブ・ジョブズの素顔」)モンブラン
文
モンブラン