日本人元副社長が語る「人間の感性に対するリスペクト」
10年の間にアップル本社の副社長を務めた2人の日本人にインタビューした。04年から2年間副社長を務め、ジョブズの製品開発の現場を間近で見てきた前刀禎明は次のようにいう。
「この製品はこんな機能でこんなこともできますよではなくて、あくまで人々が係わって嬉しいかどうか。重要なのはあくまで人なんですね。コストや営業の向上ではなく、人々の暮らしをどう変えたいかを逆算して製品を開発するよう求められた」
ジョブズは製品開発以外のこだわりも厳しいものがあったという。目の当たりにしたのは8年間アップル本社にいて副社長も務めた福田尚久だ。
「10年前に直営店を開く準備をしていた時、本社近くの倉庫のなかに実物大の店をつくった。何度も何度も作りかえ、テーブルの素材にどれを使うか一つ一つ吟味、試作品を作るのに何億円の使ったのではないか。その根底には絶対にお客様には分かるから完全を作らなければダメだという、人間の感性に対してのリスペクト(尊敬)なんですね」
文
モンブラン