「昼寝の仕方教えてあげる」
ツレのうつ病をきっかけに、晴子とツレの関係が逆転するのがおもしろい。律儀なツレは会社を辞めても休み方が分からない。「昼寝でもすれば」という晴子の提案に、「世間様に申し訳ない」と拒むツレ。見かねた晴子が昼寝の仕方を教える。何とも奇妙なエピソードだけれど、リアリティーを感じさせるシーンだ。曜日別にどのネクタイをするか、どのチーズをお弁当に入れるかまで決めているツレの几帳面さを、前半でていねいに描いているからだろう。もちろん原作にも描かれている実体験ということも大きい。
逆に、原作には描かれていない部分が浮いてしまった。たとえば、晴子の母親と父親のエピソードなどは無理にハートウォーミングな展開にもっていっている印象を受ける。
そもそも晴子とツレの仲は良いのだが、それ囲む人たちはとくに意味を持たされず、話の展開のための使い捨てにされてしまっているのも気になった。晴子とツレの間に入ってくるような人物を設定すれば後半のダルさは解消できたはずだ。エッセイであれば終始2人だけの話で良い。しかし、映画では話を引っ張る第三の人物が必要である。
とはいえ、見ているこちらを幸せにさせてくれるような夫婦像は見事に描かれている。宮崎あおいと堺雅人の演技を見ていると、2人の夫婦役をまた別の作品でも見たくなる。
野崎芳史
おススメ度☆☆☆