不正受給・財政逼迫…でも、切り捨てていいのか生活保護
野田佳彦総理が就任して以来、まっしぐらに進む増税路線やTPPへの参加を急ぐ姿勢に驚いたわけでもあるまいが、欧州の金融不安が拡大している。大手金融機関デクシアの破綻。スペインとイタリアの国債の格付けがそれぞれ2段階と1段階引き下げられた。「週刊文春」はこの影響は日本にも必ず波及すると警告する「『世界恐慌』本当の恐怖 日本は『貧困大国』に堕ちる!」を特集している。
この中で急増する生活保護の問題を取り上げている。敗戦直後の1951年でさえ204万人だったのに、現在最多の209万人。このままいけば生活保護費は20兆円も増え、財政破綻に結びつくと警告している。18人に1人、受給者数ナンバーワンの大阪市、中でも貧しい人が多いといわれる西成区釜が﨑を取材している。大阪市の場合、一人暮らしだと約月12万円。そのうち食費が4万円、光熱費が4万円、住居費が4万円。受給者にはケースワーカーが付き、定期的に訪問して就労支援などを行うはずだが、人手不足もあって3か月に1度ぐらいしか来ないそうだ。
「街には競馬などの公営ギャンブルの中継を流し、無料で食事までできる賭場や昼間から開いている飲み屋が並ぶ」(文春)
受給者の中には医療費がただになるから、処方された薬を集めて転売する者もいる。偽装離婚して旦那と暮らしながら生活保護費と母子手当両方をもらっている女性。右目が義眼だとウソをついて生活保護をもらう男。受給者が住宅ローンを組める会社もあるという。以前からヤクザが不正に生活保護を受けていることは大きな問題になっている。
ここへきて新たな問題も発生してきているという。「東日本大震災の被災者に向けた失業保険や雇用調整助成金の期間が切れ始め、彼らが生活保護を受給する可能性が高いということだ」(文春)。就職氷河期の30代は近い将来の生活保護予備軍で、月6万円の国民年金では食べていけずに雪崩れ込んでくるかもしれない。
文春はこういう。「生活保護は税金で賄われている。彼らに『働かざる者食うべからず』と教える者はいないのか」
ちょっと待ってほしい。担当者の数が足りないことはわかるが、不正受給をしている者を見つけ出し、厳しく処分することはやらなければならない。健康で文化的な最低限の生活を送ることは憲法で保障されているはずである。財政破綻するから生活保護を見直す必要があるかのごとき論調には違和感を覚える。
これから世界不況が日本を襲うとなれば、なおさら生活保護は必要になり、そこへの支出は致し方ないのではないか。生活保護の受給条件をこれ以上厳しくすれば、行政側はもらえるはずの人間まで非情に斬り捨ててしまうだろう。それよりも考えるべきは、愚にも付かないことばかりやっている政治屋や役人の数を大幅に減らし、大企業優遇を改め、切り詰めるところを徹底的に切り詰めることこそ、喫緊にやらなければならないはずではないのか。財政再建、子孫へ借金を残すなという財務省の口車に乗せられ、無批判で増税に賛成する大新聞への批判精神はどうしたのか。ちょっと気がかりな記事である。