豪雨で防災無線、広報車サイレンも聞こえず
静岡大学防災総合センターの牛山素行准教授は「小さな自治体では、どこでも起こりうることだ」という。
災害対策基本法で市町村は情報を把握して避難勧告・指示を出すことになっているが、状況判断の態勢が整っているところは少なく、防災担当も多くは兼務だ。NHKの調べでも、「防災の手だてがない」ところが4割もあった。
盲点は他にもあった。名古屋市は20日の台風15号で庄内川が氾濫して、流域の市民109万万人に避難指示を出したが、これが想定通りに伝わらなかった。170か所の同報無線でサイレンとスピーカーで呼びかけたが、凄まじい雨音でまったく聞こえなかったのだ。
名古屋は2000年 に10人の死者を出した「東海豪雨」を教訓に、態勢を整えていた。上流の雨量の把握にはじまり、同報無線をメーンに、広報車での呼びかけ、地域の連絡網、6月には携帯のエリアメールも実用化していた。しかし、同報無線は聞こえず、広報車も道路沿いでは聞いた人もいたが、多くは「何かいってるな」程度だった。連絡網も効果は限定的だったという。
被害の大きかった守山区下志段味地区では、結局130人が水没家屋に取り残され、「2階 からボートで助けだされた」という状況になった。130人へのアンケートでは、同報無線を聞いた人は1人もいなかった。避難指示でいちばん伝わったのはエリアメールだった(27%)が、その内容が「守山区の一部」などと漠然としていて、「何だろう」といっているうちに多くが逃げ遅れた。
牛山准教授は緊急情報伝達には複数の手段を確保することだという。また、雨の中の避難の注意点として、「流れる水は膝まで来たら危険。車も30センチでエンスト、浮き上がりが起る。必ずしも避難所へ行く必要はない。自分のいる場所と安全な場所を日頃から見極めることも必要だ」とアドバイスする。
言葉でいえば、きわめて当たり前のことだが、なかなかできないのが現実だ。豪雨にしても地震にしても、想定外が続く。われわれも「想定」のレベルを10_12段上げないといけないのかもしれない。
*NHKクローズアップ現代(2011年10月13日放送「非難の情報が伝わらない 検証 台風12・15号」)ヤンヤン