「ぶつかられた」70歳以上47%、子ども連れ42%
ではどれほど危険なのか。愛知工大の小塚一宏教授が特殊なアイカメラを使って実験した。学生が装着して駅のホームを歩く。観光パンフを見ながらだと、歩きながらでもチラチラと前を確かめている。パンフの情報は変わらないからだ。ところが、スマホになったとたん、視線は小さな画面にくぎ付けになる。「情報が更新されていくので目が離せない」と学生。母親に手をひかれた小さな子どもが脇を追い越したが、まったく見えなかったという。「怖いなぁと思いました」
徳田教授のアンケートでは、「ぶつかられた」ことがあるのは70歳以上で47%、子ども連れの母親で42%だった。とっさによけられない障害者や子ども、お年寄りが危険にさらされていることがわかる。
京都大学霊長類研究所の正高信男教授は「遠くの人とつながっていると、目の前の空間意識がなくなる」という。たとえば、電車で読書をしていると目の前の人との間にバリアが張れる。 ウォークマンもそれで、いまスマホになった。他人と顔をつき合わせる緊張から解放されるのだという。
たかがケータイ、されどケータイ。それで生活が豊かになってはいるのだろうが、画面を見つめてもの言わぬ人の群はやはり異様だ。正高教授も「道具ですから、人間が使われちゃいけない」と話す。
やがては気がつくのだろうが、それまでにケガをしたり電車にはねられては、元も子もない。
ヤンヤン