かつて女性にセックス開放した「微笑」「新鮮」という女性誌があった
大増税、消費税値上げ、1ドル=60円割れ、いや50円もあるかもしれない世界恐慌への不安と、世界中が「うつの時代」に入ってしまったかのようなクラ~イ話ししかない今、明るい話題はないかと探したら、ありました! ポストの毎度おなじみセックス特集「男の『サイズ』を測る女たち」がそれだ。
これを選んだのは、この特集がわれわれの世代にはスゲー懐かしい「微笑」や「新鮮」という雑誌を取り上げているからだが、今ひとつは、この特集の右ページに綾瀬はるかのカラーグラビア、それも超可愛い顔のドアップがあるからだ。はるかチャンがニッコリ微笑んだ顔の隣には、様々な人造ペニスの写真が載っている。「フラッシュ」が昔スクープした「日テレ夏目三久アナのコンドームとニッコリ写真」のようではないか。このレイアウトは素晴らしい。はるかチャンが可哀そうだけど。
さて、祥伝社から出された「微笑」(隔週刊誌)と「新鮮」(月刊誌)は、70年代前半から90年代半ばにかけて大きなセンセーションを巻き起こした女性誌である。あの時代に「愛棒身悶えるナメ方研究」「膣圧時計」「ペニス勃起度ゲージ」という露骨な特集を組み、それを淑女たちが挙って読んだのだ。
ペニスはもちろん、ヴァギナ、オナニーという単語が誌面に踊り、性をエンターテインメント化したのだが、この雑誌を創刊したのが櫻井秀勲(80)である。櫻井は光文社にいて「女性自身」を国民雑誌にまで伸ばした伝説の編集長。私が講談社に入ったときは、残念ながら光文社の労働争議で辞めた後だったが、私は彼がつくった女性自身のバックナンバーを読んで企画の立て方や記事づくりを学んだ。
ポストの記事の中に「女を濡らした傑作タイトル選」というのがある。これが笑える。「未確認ぶら下がり物体 よい『KOGAN』を見分ける」「ほのぼのレイプ」「本格膣圧計・ペニス長大器プレゼントつき!名器・名刀づくりカード」「1日10分!『締まるワギナ』蘇生ヨガ」…。櫻井インタビュー「毎号、牢獄に入る覚悟で作っていました」もすこぶるおもしろい。
微笑が発売されて女性が自分からセックスに興味があるといえる環境はつくったが、女性を性に目覚めさせたのは微笑ではないという。はるか昔からそういう女性がいたことを、松本清張の「菊枕」を読んで知ったそうだ。女流俳人・杉田久女をモデルにした作品だった。時代を問わず、悶々と性に悩む女性を檻から解放したい。そうした思いで微笑をつくったのだと話す。
彼の雑誌を成功させる技術のひとつに「振り子理論」がある。「右に90度振りきって、左にも90度振りきる。『名器になりたい!この膣鍛錬で』という企画をやる一方で、『女性差別の原風景』という特集も組む。この振り幅が大きければ大きいほど、雑誌は受ける」
私も週刊誌編集長時代に「ヘア・ヌード」と「小沢一郎批判キャンペーン」をやって成功したが、これも振り子理論に当てはまるのだろう。編集者必読の特集である。