広い世界のなかでも、米国といえは機会均等と結果の不平等を最大限尊重する国とされている。そして、彼の国で成功し、カネを手にした者は必ず拍手で迎えられ、リスペクトされ、優遇され、どこかの国のようにねたまれて足を引っ張られたりしないはずだった。
しかし結局のところ、そうした米国のカルチャーなるものはただの都市伝説に過ぎなかったのだろうか。それとも近年の「金持ち優遇」政策があまりに行きすぎだったのか。
なんにせよ、最近は、米国のカネと富の象徴であるマンハッタンの「ウォール街」などで、大規模なデモが起きているのは、ご存知の通り。少数の成功者が富を独占し、負担は少ないこと、また自分たちは貧しく、仕事がないことへの抗議が行われているのだ。
バルコニーにタキシードやスーツ姿の男女
そんななか、動画サイトのYouTube(ユーチューブ)には、「金持ち」(ウォール街のエリート)への憎悪を駆り立てるような動画が投稿されている。「Wall Street Mocks Protesters By Drinking Champagne 2011(ウォール街はシャンパン片手にデモをあざ笑う)」という題名からして、扇動的である。この動画の再生回数は数十万級ながら、一連の「ウォール街占拠デモ」関連動画のなかでは最高級の数字である。
さて、「事件」は、ロウアーマンハッタンの公園から出発したデモの集団が、「ウィー・アー・99%!」などとチャントしながら、ウォール・ストリート55番地にさしかかったところで起きた。
そこには、見るからに由緒ありげな立派なビルがそびえ立っている。堂々たるギリシャ式の円柱がふんだんに使われたこの建物は、国の歴史建造物にも指定されているそうだ。かつては銀行やホテルに使用され、現在は高級レジデンスや会員制クラブが入っているという。
ビルの2~3階の高さに相当すると思しきバルコニーには、タキシードやスーツ姿の男女が多数集まっている。シャンパングラスなどを片手に楽しげに談笑している様子だ。なかには、デモ隊のほうに身を乗り出し、カメラで撮影したり、グラスを掲げたり、手を振るような仕草をする人もいる。
実際のところ、彼らの会話の内容や心境は不明だが、「デモをあざ笑っている」ように見えなくはない。動画の投稿者は、動画の説明文で「くつろいだ見物客がデモを眺めていた」「デモ参加者の戦いにはまるで無関心そうだった」などと描写している。
ボンド柳生